Novel.1
□繋ぐ
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あの日、白鳥とお見合いをした。
高木が来ると分かっていての賭けだったのだが、本当に高木は来た。
けど、あの時にもし高木が来なかったらどうなっていたんだろう。そう考えることがある。
そんな未来は想像すら出来ない。
「美和子さん?どうしたんですか」
眉間にシワがよってますよと高木は笑う。
誰のせいで……と一瞬思うがこれは元々自分の失態だった。と反省。
「あのお見合いの時、よく渉くん来てくれたなーって」
「あの時は僕だって必死ですよ。大好きな人を取られてたまるかって」
こんな草食系代表みたいな彼でも男らしいところはあるようだ。
「渉くん意外と独占欲強いもんね」
佐藤は腕を組んで深刻そうに言う。
そこですか?!と高木は拗ねてしまったが仕方が無い。
「けど、渉くんが来てくれてよかった。私は渉くんの事がより好きになれた」
普段は言わないようなことを言い佐藤は照れる。
そんな佐藤をみて高木は幸せに包まれる。と、同時に空腹も感じた。
「今日はラーメンでもいかがですか」
「あら、いいわね、私もちょうど食べたかったの」
初めてあなたから夕飯に誘われたラーメンが今、僕は食べたい。
「外は寒いです。良ければお手をお借りしていいですか?」
高木は佐藤に手を差し出す。
「あら、珍しいわね」
佐藤はその手を握りしめた。
この繋いだ手を決して離さない。