◇お話◇

□休日の過ごし方
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今日は休日。部隊の連中は寝て過ごす人が
大半だ。
シガイと死闘を繰り返すのが我々の仕事。
精神的にも体力的にもそうせざるを得ないのは
言わずと知れたこと。

しかし私は違う。

休日だからこそ朝は早く起き、
コーヒーを入れて新聞をゆっくり読む。
そしてスクランブルエッグにカリカリベーコン、そば粉を使ったホットケーキに
メイプルシロップとサワークリームを乗せて
ゆっくり味わう。
普段はコーヒーとシリアルだけの朝食だけど、
休日は自分の好きなものを作って食べる。

朝食が終わったら愛車の洗車。

私の趣味はスニーカー収集のほかに
ドライブでもあるのだ。

綺麗な輝きを取り戻した車で、今日は
ガーディナに行こう。
好きな音楽をかけて、コルの瞳と同じ
綺麗なブルーの海に会いに行こう。

その時、着信音が鳴った。
これがコルからなら心躍ったというのに・・

「はい私。・・どうしたの?」

『名無しさん隊長お休みのところすみません』

部下からの電話はよくあることだ。

書類に私のサインが必要だ。
この敵にこの魔法の効果は?
応援要請お願いしますなど。

『前回、新種のシガイについての書籍を
調べたいのですが大魔法重要事項説明書
を預かっている部屋の鍵が隊長しか
持っていないと聞いて・・』

「わかったすぐ行く。」

私は着替えて車に乗った。
大魔法の術者はクロウ含め、重要危険人物に
値する。私たちの魔法一つで国を亡ばせる
力を持っているのだから当然と言えば
当然だけど、だからと言ってそのたぐいの
参考書まで私たち以外には簡単に見せられない
のは、面倒な話ではある。


すぐに王都につくと部下が真っ先に
頭を下げて私の車に近づいてきた。

「すみません名無しさんさん!せっかくの
休みなのに・・」

まだ20代そこそこの、かわいい男子に
頭を下げられると私も弱い。

「なに言ってるの、勉強は良いことよ。
しっかり調べてレポートお願いね」

私は車を降り、二人で図書館に
向かった。

「ここにある本は持ち出し禁止だから、
終わったら私に声かけてね。」

「はい!」

机に向かう青少年。それを見守る
姉のような心境。私も歳をとったわ・・。
そんなことを考えながら、私は
彼とは反対側の机に静かに座った。

コルは今日も出勤のはず。
想いを伝えたあの電話から話してもないし
会ってもいない。

会いにくい感情は全くない。
早く会いたい、あって告白の続きを話したい。
それだけだった。

今すぐに電話したい気持ちだがここは王都。
仕事は仕事で割り切るのが望ましいし、
彼も見るからにそういうタイプだろう。

ふと、部屋の窓に目をやると、シガイ退治から
帰ってきたであろう彼の姿が目に飛び込んだ。

「・・泥一つついてない。やっぱり
戦闘に長けてるのねぇ」

私はボーっと彼を見ていると、彼も
私の車に気が付いたようだった。
王都の正門の端の方に止めていたが、
真っ赤なスポーツカーはやはり目立ったか。

すると突然、着信がなったので
慌てて部屋の外に出た。

コルからだ。

コルも意外と女性の気持ちを分かってくれる。
仕事場で遠慮して電話をかけない女性の気持ちを・・

私はすぐに電話に出た。
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