◇お話◇

□もう待てない
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おまけ




名無しさんがあたしのスマホで
イグニスと話し込んでいる間、
あたしは彼のスマホで
将軍に電話をかけた。

「もしもし将軍?あたし。アラネア」

『…これはイグニスの
電話じゃなかったか。』

「まあ色々あってね。それより
名無しさんとめでたく付き合う
ことになったのに、まだまともに
会ってないんだって?」


『…説教の電話か。』

「まあね。」

少し待ってろ、と将軍。
どうやら信号が青に変わったため、
電話をするべく車をどこかに
止めるらしい。

あたしは暫く無言で待っていた。
電話から微かに音楽が聞こえる。
どうやらジャズのようだ。

ふうん…こういうのが好きなんだ。

しばらく音楽に耳を傾けていると
ようやく彼の声に変わった。

『それで、説教とは何のことだ』

「あたしは細かいことを
ぐちぐち言うのは嫌いだから
簡潔に言うけどね、ずっとあんたの
ことを待ってるよ。」

『…だろうな。』

「自分でもわかってるんなら
早く会いに行きな。
5年も待たせりゃ十分だろう」

『王都でたまに顔を合わせている。
それで満足はしていないが、
仕事が落ち着くまではそれも
仕方がないとは思っていた。
・・・が、どうやら俺の方が限界だ。
だから今、あいつの家に向かっている。
と言えば気がすむか。』

「…あら、なんだそうなの。
アポ無しで押しかける度胸が
あるなら安心したよ。」

『…当たり前だ。』


「名無しさんには会いたきゃ
自分から行きなと言うつもりだけど
こういうことは男から行くのが
男女の暗黙のルールだからね」

『わかっている。もう切るぞ。
あいつの家の近くまで来ている。』

「流石将軍、やることは早いね。
たっぷり可愛がってあげて。」


それじゃあねと電話を切り、
リビングに戻った。

そしたら何?メガネったら
あたしに会いたくなったら
なんとしてでも車を飛ばすとか
なんとか・・

勘弁してよね。
イグニスってこういうことを普段から
サラっというタイプだけど、
親友にまで暴露することないじゃない。

あたしは真っ赤な顔でイグニスに
デコピンした。

・・でも、嬉しかったから
今日はあたしも、たっぷり可愛がって
やろうじゃないか。


end
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