◇お話◇

□Super Woman
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目覚まし時計を見ると朝6時。
隣に寝ている彼を起こさないように、
そっとベッドから体を起こした。

カーテンを静かに開け
まだ薄暗い空を見上げて
「今日も1日が始まる」と実感する。

フライパンを温め、ベーコンを焼き、
バターを落として牛乳と塩コショウ
入りの溶き卵を素早く混ぜた。

ここはコルの家。
昨日はコルの方が早く退社したため、
私は自分の仕事が終わると
車で彼が待っている家に向かい
一泊した。

家に泊まるのは今回が初めてだ。
将軍クラスともなるとその
給料の高さはこの御立派な
マンションから想像がつく。

揃えてある最小限の家具も
オシャレでシンプルなものだが
かなり良いものだとわかる。
コルにそのことを指摘すると、

「クレイラスがこんな時くらいしか
金の使い道がないだろうから良いものを
買えとうるさくてな。」とのこと。

観葉植物なんてコルには珍しいと思ったら
すべてクレイラス様の助言だったらしい。

パンも焼け、コーヒーも入れ終わると
私は再び寝室に戻った。

「あ・な・た。朝食が出来ました、
なーんて」

私は彼の寝顔を見つめた。
普段は眉間にシワを寄せているが、
無防備の今はそのシワが見つからない。

よく見ると細かい傷に、
45歳と言われれば納得するような
薄いシワも軽く見て取れる。
幼い頃から神経を張り詰め、
数えきれない過酷な経験をし、
時には涙を流すこともあったろう。

この人は私の尊敬する人生の先輩でもある。


彼の頬を撫でながら
「あなた・・・」ともう一度
ささやいてみた。


すると綺麗なアイスブルーの瞳が
ゆっくり開き、小さく擦れた声で
「・・・もう起きている」
と聞こえた。


「おっ・・お目覚めですか」

「・・・その呼び方も
起こし方も良いものだな」


私は一瞬で赤面した。

「朝食を作ってくれたのか。
ありがたくいただこう」

「キッチン借りたよ。早く来て」
私は赤い顔を悟られまいと、
一人急いでリビング駆け込んだ。


二人で朝から食卓を囲むのは
初めてでかなり気恥ずかしい。
私は知らず知らずのうちに
食べるペースが早まっていた。

「相当腹が減っていたのか。」

「ま、まぁね。昨日の夜は
誰かさんのおかげでかなり
体力を使いましたから」

彼は鼻でふっと笑うと
コーヒーを一口飲んだ。

「・・腰の方はどうだ」

「これでも鍛え上げていますからね、
といいたいところだけど
誰かさんのせいでガクガク。」

私は腰を擦った。
しかしこの鈍痛を感じる度に、
昨夜のそれを思い出させるのは
悪くはないことである。

「それはすまなかったな。
しかしあまり優しくすれば
それはそれで激しいお前には
物足りないだろう」

「コル・・・・あのさ、前から
薄々感じていたけど、
貴方ってわりとエッチよね」

「自覚はしている」

・・してるのね。


今日、私は午後から出勤。
彼は普通に朝からなので、
彼と一緒に家を出て、私はいったん
自分のうちに戻ることに。
来客用の駐車場に止めておいた
自分の車に私はエンジンをかけた。

運転席の窓を開けると、
彼が顔を覗かせた。

「朝食、旨かった。」
そう言うと車に手をかけキスを交わした。
一回ではやはり物足りなく、
私は彼の太くてたくましい首に
手をまわし、二回目をせがんだ。

「朝から刺激的だな。」

「嫌いじゃないでしょ」

確かにそうだとコルは私の
唇に触れた。


「気を付けて帰れ」

「ありがとう。じゃあお先に」

私はアクセスを踏み
コルのマンションを後にした。


続く
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