◇お題◇

□19 一緒に映画
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「よくさ、雑誌なんかで初デートに
ぴったりの映画特集!てあるじゃん?
俺あれは納得できないんだよね〜」

いつものお店にいつものメニュー、
ジャンクフード専門店とはいえ
体が資本の四人は一応気を遣っているのか、
野菜多めのバーガーにかぶりつく。
約一名を除いては・・・



「ノクト、もう100万回は
言っているが野菜も少しは食べろ」

「わかってるようるせーな」

「その言葉を100万回聞かせられてる
軍師様も辛抱強いよなぁ」

ズズっとダイエットコーラを
すすりながらグラディオは
ちらとイグニスに同情の視線を
向けた。

「もう慣れている。」

さすがイグニス、とグラディオが言い
ブツクサ文句を言っているノクトに
思わずチョコボカラーの髪を揺らしながら
プロンプトはわめきだした。

「ねえ!俺の話聞いてる!?」

「・・初デートがどうしたって?」

ノクトはポテトを加えながらダルそうに
答えた。

「だから、初デートに映画って俺は
納得いかないんだよって話!
好きな人と2時間以上話も出来ないし
いちゃいちゃも出来ないんだよ?」

「まあしようと思えば出来るけどな。
声を出さずにするもの興奮す・・」

「グラディオ、子供の前では控えろ」

突っ込むのも面倒なノクトは「まあ
プロンプトの言うことも
わからなくはねぇな」とだけつぶやいた。

「でしょ!?やっぱりノクトはわかってる!
2時間ただ隣に座ってるだけって
もったいないし、何より緊張して
映画の内容が入ってこないよ、絶対!」


「しかし好きな相手が隣に
いるだけで俺は幸せだと感じる方だな。
相手と一緒であるなら場所は問わない」

眼鏡をクイっとあげながらそんなことを
淡々と語るイグニスに相変わらず
ロマンチストだねぇとグラディオは笑った。

「まあ人それぞれだろうな。
そういやプロンプトと同じ理由で
デートに映画はあり得ないと騒いでいた
奴が他にいたな・・・」


「え?誰!?俺と気が合いそう!」



***


「映画は嫌いか。珍しいな」

久しぶりの休日、海の好きな名無しさんは
勿論ガーディナを選び、少し贅沢をして
海の幸に舌鼓を打っていた。

「だって二時間座りっぱなしで
腰が痛くなるし音量も鼓膜が破れそうなほど
騒がしいし。周りに気を遣って
あまり食べられないしトイレも
自由に行けないし。
2時間の束縛なんて御免よ。
私はそこまでマゾヒストじゃないわ。」

名無しさんは魚を小さく切り口にした。
バターとトリュフで香り付けされた濃厚な
クリームソースは淡泊な白身魚に良く合う。
思わずほころんだ顔は発せられたその
過激な台詞とは真逆であり、それが
コルにとって可笑しかった。

「なんで笑うの?」


「・・いや、映画関係者に何か
恨みでもあるのかと思ってな」

ないわよ、と名無しさんはバツが悪そうに
答えた。

「コルは映画好き?観たかったら
勿論付き合うよ」

「いや、俺もDVDを借りて自宅でゆっくり
観たいタイプだが・・たまには
映画館に行ってみないか?」

珍しいコルの提案に名無しさんも
驚きつつスマホを取り出した。

「そうね・・観に行こうか。
今何やってるかしら」


***



確かに長時間座っているのは辛いし
周りに気遣うのも嫌だとは言ったけど・・

「コル、ここって・・」


「お前のわがままを全てクリアに
出来るのはここしかないだろう。」

コルは行くぞ、とシャンパンを片手に
足早に部屋へ向かった。

俺に任せてくれとリードしてくれるのは
さすがといったところだが
まさかこの場所を選ぶとは・・

二人で30000Gはするであろう
プラチナルーム。
そこはまるで高級ホテルで
アルコールを飲みながらキングサイズの
ベッドに寝そべりながら新作の映画を
堪能出来るという、身の程に余る
映画館であった。

名無しさんふかふかのベッドにそっと
座ると、コルもジャケット脱ぎ
彼女の隣に腰掛けた。

「ありがとうコル。とても快適に
映画が観られる素敵な部屋ね・・」

眠気との戦いになりそうな気も
するけど・・と名無しさんが笑うと
コルも小さく笑った。

二人で寝転びながらスクリーンを眺める。
二人ともアクションが好きなはずだが
生憎恋愛映画しかやっておらず
部屋中に男女の甘ったるい台詞や
痴話げんかが響き渡っている。

しばらく黙って観ていたが名無しさんの
肩に彼の顔が乗ってきた。
静かに横を向くとス〜ス〜と
規則正しい寝息・・

名無しさんは珍しいと思いながら
彼の頭を優しくなでた。
いつも激務でろくに寝ていないのだろう。


コルの長いまつげや顔のしわ、
格好の良い高い鼻、少し荒れている
薄い唇を隅から隅まで堪能し、
軽くおでこにキスを落とした。


「おやすみ・・・
今日のディナーはこの映画の
感想を永遠と語ってあげる・・・」


私が眠気に勝てばの話だけ・・ど・・


END
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