◇お話◇

□休日の過ごし方
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「コル?今帰ってきたの、
図書館から見えてたよ。」

『そうか。それよりどうした。
今日は休みのはずだろう。・・部下か。』

「そういうこと。」

『ご苦労なことだな。・・その、
この前のことだが・・。』

珍しく、あのコルが言いにくそうにしている。
そうよね、色恋沙汰は慣れてなさそうだから。
ここは私がリードして話すしかない。

「この前は突然の告白ごめんなさい。
でも、ずっと前から伝えたかった事なの。
コ・・将軍も同じことを?」

『・・ああ。そうだ。続きは直接会って
話したい。今日は何時までそこにいる?』

「部下の調べものが終わり次第としか
言いようがないけど・・少しだけ会える?」

『ああ。時間を作る。今日は泊まりだから
用事がすんだら連絡してくれ』

「わかった。」

胸の高鳴りが鳴りやまない。
彼の声が耳から離れない。
手がしびれている。
頭がくらくらする。

私の好きな人が、私を好きでいてくれる。

大昔の初恋を思い出しても、ここまでの
胸のときめきはなかったかもしれない。

私は部下に気づかれないよう、にやける顔から
真顔へ戻し、図書館に再び入っていった。

「隊長、誰かと話していました?」

「あ、うん。それより終わった?」

「いえ、ちょっとこの資料で聞きたいことが
あるんですが・・」

勉強家の彼。これは長くなりそうだ。





ようやくコルに連絡できたのは夕暮れ時。
私たちは王都の裏庭で会うことになった。

長い廊下の先には隊員たちが休んだり
ちょっとしたトレーニングが行える
小さな庭がある。
私は滅多に行かないけれど、コルは
よく来るのか疑問だったが、彼がなぜ
この場所を選んだのか一目で理解した。

オレンジ色の背景に、紫と青の雲が
まるで絵画のように美しく空に
描かれていた。
ここから見る夕日は正に神々しい。

先に来ていた背の高い黒い影を
見つけると、私は声をかけた。

「将軍」

振り替える彼の顔に夕焼けが
移り、整いすぎたその顔をより
いっそう美しいものにした。

「来たか。」

「こんなに良い場所があったなんて。」

「知らなかったか。」

「知らなかった。ありがとう、
教えてくれて。」

「いや...お前と一緒に見たいと
ずっと思っていた。」

「ずっと?将軍はいつから私を?」

彼はふっと小さく笑うと、オレンジ色
の空を見上げながら一言、

「いつからだったか・・思い出せない
くらいに昔からだったな」

と予想もしていないことを言い放った。

「それ本当?私はかれこれ5年、
片思いしてたかな。
我ながら長い恋だったわ。
流石に将軍は5年はないでしょう」

「俺も同じくらいだ。」

驚いた私の顔に彼の大きな手が
触れ、私の頬を優しく包み込み、
その吸い込まれそうな
青い瞳で私を見つめた。

心臓の音を悟られまいと必死で
理性を保とうとするも、長年、
恋い焦がれてきた相手に触れられて
平然とできるはずがない。

しかしここは王都の裏庭。
誰が見ているかわからない。

彼の手はすぐ私の頬から離れ、
私を少しがっかりさせた。

「今度の休み、酒を飲みにうちに
来るか。」

もちろん、行くと言う前に、
彼は
「今度は断らないでくれ」と
つけたした。

早く彼に触れたい。
抱き締められたい。
手を繋ぎたい。

私は笑いながら

「今度からはもう断ることは
絶対にないから」
と伝えた。
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