本棚 2
□愛故に 9
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「私は執務に行くが、ソフィアはもう少しゆっくりしているといい。昨日も無理させたからね。」
「はい。」
「いってくるよ。」
「いってらっしゃい。」
ちゅっ
パタン
ソフィアを妻にしてから1ヶ月が経とうとしている。毎日のようにソフィアを抱いて、愛おしいすぎてつい無理をさせてしまう。ソフィアが孕むのも時間の問題。子どもができればさらにソフィアを繋ぎ止める枷となってくれるだろう。
しかし、ソフィアは私を愛してくれるようになるのだろうか。
:
パタン
「はー。」
疲れた。精神的にも身体的にも疲れてしまった。抱かれる度にカール様の私への愛を思い知らされる。あんなに愛してくれているのに、未だにカール様を兄としてしか見れない。愛はあれど、それは家族愛なのだ。毎日のように抱かれてるから、子どもができるのも時間の問題。
その時私は我が子を愛せるのだろうか。
:
コンコン
「はーい!」
ガチャ
「ソフィー、いらっしゃい!」
「お邪魔します。」
私がカール様の妻となってから、3ヶ月が過ぎようとしていた。そんなある日私はシュウ君のお誘いを受け、シュウ君のお部屋に遊びに来ていた。
「少し見ない間にシュウ君、背が伸びたね。」
「そうなんだ!そのうちソフィーより大きくなると思うよ!」
「ふふふ。すぐ抜かされちゃいそう。」
「ソフィーはなんか…。」
「なんか?」
「ううん!何でもない!今日はね、ソフィーが好きな林檎のお菓子を作ってもらったんだ!」
「覚えててくれたの?でもシュウ君甘いもの苦手じゃ…。」
「僕はお菓子を食べて幸せそうにしてるソフィーを眺めてるから!アップルティー飲みながら!運んできて!」
そう侍女に声をかけると、侍女がドアを開け別の侍女が林檎のお菓子を運んでくる。部屋の中に林檎の香りが広がっていく。いつもはいい香りに感じるのに、なんだか今日は。
「ソフィー大丈夫⁈顔色悪いよ!」
吐き気がこみ上げてきた。
「ちょっと吐き気が…。」
「まさか…。ソフィア様、お部屋の方に戻りましょう。歩けますか?」
「ごめんなさい。歩けそうにないわ。」
「少々お待ちください。」
そう言って侍女は出て行った。
「ごめんなさい。せっかく用意してくださったのに台無しにしてしまって…。」
「大丈夫!また用意してもらうから、また今度やろう?それにお菓子が好きな弟がいて、今回のお菓子はその弟にあげるから!」
「具合が悪いと聞いたが、大丈夫かい?」
「父さん!」
「カール様。」
「すまない。ソフィアが具合が悪いことに気づかなかった。私が抱きあげていくから、掴まって。よっと。」
「シュウ君、またね。」
「うん。お大事にね。」
パタン
カール様に抱きあげられ、私は自分の部屋へと戻った。そこで、カール様は侍女から私が具合が悪くなった経緯を聞くと、「まさか。」と呟き。侍女に耳打ちをした。すると侍女は「おそらく。」と呟いた。するとカール様は少し興奮したように私の肩を掴んだ。
「カール様?」
「ソフィア!」
「え?」
「おそらく君のお腹には新たな命がいるんだよ!」
「新たな命?」
「そうさ、私とソフィアの子どもができたんだ!」
子ども?カール様との?
「すぐに医者に診てもらおう。女性の医者を呼んできてもらえるかい?」
「かしこまりました。」
私が母親に?
「ソフィア?」
「はい。」
「嬉しくない?」
「驚きすぎて、戸惑ってるだけだよ。」
「そう。」
その後、女性の医者に妊娠していると診断されてた。
私は、戸惑いばかりが先行して喜べなかった。
ごめんね。私が母親で。