薄桜鬼『桜恋録』1

□No.13
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名前「ぎゃあああああああっっっ!!!!!」




私は悲鳴を上げてもがき、押し入れの襖を開けて何とか外へ這い出る。

すると、押し入れの中からゴツン!という鈍い音と「痛っ!」という声が同時に聞こえてきた。


お、沖田さんめ、きっと押し入れに頭をぶつけたんだろ!

わ、私をいじめた天罰だ!!



にしても押し入れにG出るかフツー!?

逃げ場ないじゃん!!!

つーか誰だよ押し入れにGが住んでるこの部屋の主は!!




?「 ──── おい」




……その声に、私の背筋は凍りついた。


…………ま、まって。

まさか、この部屋って、




土方「そんな所で何してやがるんだぁ?苗字……」


名前「ひいぃっ!!」




土方さん!!?

ここ土方さんの部屋かよ最悪じゃねえか!!!




名前「え、えと、実はみんなで隠れんぼしてて!慌ててたもんですから、ここ土方さんの部屋だって気付かずに入っちゃって、あはは……」


土方「隠れんぼだァ……?」




ひ、土方さんの頭に角が見える!!!

後ろに炎も見える!!!!


すると、押し入れから頭を擦りながら沖田さんも出てきた。




沖田「なんだ名前ちゃん、土方さんの部屋って知ってて入ってきたんじゃなかったの?僕は元々これ目当てだったんだけど」




そう言って沖田さんは小さな細長い冊子を私の前で振ってみせる。

その冊子には、『豊玉発句集』という文字が。




名前「………あ」


土方「馬鹿、総司!!」


沖田「逃げるよ」


名前「ふぎゃ!!」




沖田さんは私の手を引いて土方さんの部屋から飛び出る。


その瞬間、




藤堂「 ──── あ!総司と名前見っけ!」


沖田「うわ」


名前「へ、平助!」




ちょうど部屋の真ん前にいた平助に見つかってしまった。




藤堂「ったくこんな所に隠れてたのかよー……って、ひ、土方さん……?」




……どうやら平助も、私と沖田さんの後ろに立つ般若の存在に気付いたらしい。




藤堂「…………健闘を祈るぜ」


名前「ちょ、平助待って!見捨てないで!」


土方「総司、苗字、ちょっと来い……」


名前「ぎゃあああああああああ!!!」





──── その後、豚骨スープもびっくりなレベルでこってりとしぼられて部屋から追い出されました。









沖田「 ──── 名前ちゃん、どうだった?僕の演技」




部屋からつまみ出された後、沖田さんが私の腕を突っついてくる。

彼の言葉に、私は眉を顰めた。




名前「演技?なんの事?」


沖田「もう忘れたの?さっきのやつだよ」


名前「さっき……?」





W沖田「……名前ちゃん、」W






──── 蘇るのは、熱のこもった声と息。

たちまち私の顔はボフンと赤くなる。




沖田「僕もなかなか役者だよねぇ。まさか本気にしたわけじゃないよね?」


名前「すっ、するわけないでしょバカ!!死ね!!死んじゃえ!!」


沖田「口が悪いなぁ。……でも、」




沖田さんはケラケラと笑う。

そして、




沖田「 ──── 可愛かったよ、名前ちゃん」


名前「〜〜〜〜〜っ!!!!」




耳元で囁くように言われ、私は爆発寸前の状態となったのだった……。










(……名前?どうしたの、その首……ちょっと赤いよ?)


(え?千鶴何言って………って、何これ!?)


(……名前、それって、)


(クソ沖田今すぐ来いやああああああ!!!!!!)
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