薄桜鬼『桜恋録』1

□No.14 @
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ハッとして前に視線を向ければ、先程私に股間を蹴りあげられた男が立っていた。


………まずい。

私は咄嗟に千姫を自分の背中に隠す。




「さっきはよくも、やってくれたじゃねえか。え?」




かなりブチ切れているようだ。

そりゃそうだ、股間蹴りあげられたんだもの。

死にかけてるんだもの。




千姫「……名前ちゃ、」


名前「逃げるよ!!」


「待ちやがれ!」




私は千姫の手を引いて再び猛ダッシュする。

千姫と2人で、必死に走った。



途中、男を巻こうと狭い路地に逃げ込んだ。

……それが間違っていたらしい。




名前「 ──── うそ!」


千姫「行き止まりだわ!」




目の前には、よじ登るには厳しいほどの塀が私たちの行く手を阻んでいた。




「逃げ足だけは早いガキどもだ」




ハッとして振り返れば、息を切らした男が立っている。

追い詰められた!!




「小僧、いつまで逃げる気だ?武士なら武士らしく戦いやがれ!」




そう言って男は刀を抜く。




名前「………千姫、下がってて」


千姫「まって!ダメよ名前ちゃん!」


名前「大丈夫だよ」




私は千姫に向けてニカッと笑うと、男の方を向いて脇差を抜いた。


本当はメインの武器は苦無だけども、苦無では致命傷は与えられず一対一では不利なので、一応斎藤さんから剣術の稽古も受けているんだ。


だけど……。



──── こわい。


私は、今から戦うんだ。


相手は斎藤さんじゃないから手加減もしてくれない。

あいつは、私を殺すつもりでやってくるんだ。



──── 死ぬかもしれない。



私の手足はカタカタと小刻みに震えている。


こわい。

とてつもなくこわい。



……でも。


この手足の震えは、武者震いだ!!!




名前「 ──── 千姫は、私が守る!!」
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