薄桜鬼『桜恋録』1

□No.14 A
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──── 屯所の扉を開ければ、そこには眉間にシワを寄せた土方さんが仁王立ちで立っていた。




名前「ひぃっ!?」




土方さんの鋭い目に睨みつけられて、私は小さく悲鳴をあげる。

なんかこの光景デジャヴなんですけど!




土方「……………苗字、」


名前「すっ、すみませんでしたーーーー!!!」




私はすぐさまジャンピング土下座をして土方さんに謝った。

ここだけの話、ジャンピング土下座ってめっちゃ膝痛いのよ、いつもやってるけど。



土方さんは私を見て大きなため息をついた。

そりゃそうだ、指定された時間から1時間以上経っているんだもの、大遅刻してるんだもの。


左之さんと新八っつぁんと平助が、こっそりこちらの様子を見ているのがわかった。

3人の顔には、私を心配する色が浮かんでいる。





土方「……約束通り、これからもお前の外出は認められねえ」


名前「……はい。遅くなって本当にすみませんでした」




やっぱりそうよね。

この調子だと事情話したところで信じてもらえなさそうだし、今回はもう諦めよう。


………と、思った時だった。




土方「………と、言いてえところだが。雪村!」




土方さんが千鶴の名前を呼ぶ。

え?と思っていると、広間から千鶴が出てきた。


……だが千鶴は、1人ではなかった。




千姫「 ──── 名前ちゃん!おかえりなさい!」


名前「えええっ!?せ、千姫!?」




そう。

千鶴が千姫を連れて部屋から出てきたのだ。




名前「な、なんでここに……」


千姫「あなたにちゃんとお礼を言いたかったの、それに千鶴ちゃんにも会いたかったし。……土方さんから聞いたわ、名前ちゃんがお使いの途中だったって。ごめんなさいね、そんなことも知らずに」


名前「いっ、いやいやいやいや!私は全然!!」




ブンブンと首を横に振っていると、「苗字」と土方さんに名前を呼ばれる。


恐る恐る見上げると、土方さんの眉間のシワは無くなっていた。

それどころか、少し優しげな表情をしているではないか!




土方「……話は千姫さんから全て聞かせてもらった。お前、彼女を守ってやったらしいじゃねえか」


千姫「本当にすごかったんですよ!名前ちゃんの気迫にあの男一瞬怯んでたもの!」


名前「せ、せ、千姫ぇぇ〜〜(涙)」




な、なんていい子なんだこの子は!!

私は目をうるうるさせながら千姫を見た。




土方「……というわけだ。外出の件だが、見張り付きでの外出は認める。……よく頑張ったじゃねぇか、苗字」


名前「ひ、ひ、土方さああああああああああああああああああああ大好きですううううううううううううううう」




初めて土方さんに褒められて、おまけに頭ポンポンまでされて、私の瞳からはブワッと涙が溢れ出す。


涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら土方さんに抱きつけば、「離れろ!!!!」と怒鳴られて頭に拳骨が落ちてきた。

いや結局こうなるの!?!?










(名前!お千ちゃんから聞いたよ、本当にすごいね!)


(千鶴ううううううう好きいいいいいいいい)
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