薄桜鬼『桜恋録』1

□No.16
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千鶴の部屋に戻れば、部屋の前の縁側に左之さんと新八っつぁんと平助が座って駄弁っていた。

千鶴はそんな3人にお茶を入れている。


みんないるし、めちゃくちゃちょうどいいじゃん!




名前「ちーづーるっ!」


千鶴「あっ、名前!おかえりなさい」


名前「やっほーみんな」


藤堂「おっ、名前じゃん」


永倉「よう、名前ちゃん!……って、なんだ?それ」


原田「………斎藤みてぇだな」


名前「さっすが左之さん、わかってる〜!苗字名前、一君ごっこしまーす!」


藤堂「一君ごっこ?」


沖田「名前ちゃん、一君の真似できるんですって」


永倉「へぇ、すげえじゃねえか」


千鶴「名前、すごく上手なんですよ」




ふっふっふっ。

とくとご覧あれ!!


私はクイッと襟巻きを持ち上げてみせる。




名前「W総司、副長の豊玉発句集を何処に隠した。今すぐに返せ。"」


永倉「うおお!?」


藤堂「すげえ、一君だ!!」


名前「W左之、何故味噌汁に豆腐を入れなかったのだ。あんたは豆腐が味噌汁にとってどれほど重要かをわかっていない!"」


原田「す、すげえ……」


沖田「プッ、想像以上にそっくりなんだけど



藤堂「一君言いそう!ってか絶対聞いたことある!」




平助と新八っつぁんは文字通り笑い転げてるし、沖田さんもケラケラと笑っている。

左之さんは目をパチクリさせているし、千鶴は目を輝かせていた。




名前「Wあんたは俺を馬鹿にしているのか?6本に決まっているだろう。W」


藤堂「ブッ、ハハハハハッ!そ、それ、この間のっ!!」


永倉「は、は、腹がつる!!笑いすぎてつる!!」


「名前、何をしている」


藤堂「うおっ、さらに似てきた!………って、え?」




……背後から漂ってきた殺気に、私たちは顔を引きつらせた。


恐る恐る振り返るとそこには、




名前「は、一君……おかえりなさい……」




浅葱色の羽織姿の一君。

彼の冷たい視線が私に降り注ぐ。




沖田「……千鶴ちゃん、あっちでお茶でも飲まない?」


千鶴「えっ、あっ、は、はい……」


藤堂「よ、よーし稽古でもするかなー!」


永倉「そ、そうだな!!お、おい左之、行くぞ!」


原田「お、おお…………」



名前「ちょ、ちょっと!!私も連れてってよ!!」




そそくさと去っていくみんなの後を追いかけようとすれば、ガシッと後ろから肩を掴まれる。




斎藤「名前、もう一度聞く。何をしている」


名前「え、え〜?………は、一君ごっこ、かなー、あはは……」




大量の冷や汗が私の背中を伝った。




斎藤「……………道場へ来い、稽古だ」


名前「ぎゃあああああああああごめんなさいいいいいいいい!!!!!!」




本日2度目の私の叫びが、屯所中に響き渡るのだった……。













(シュッ…シュッ…シュッ…)


(358、359、360………もう無理、腕が上がらないよおおおお)


(名前、素振りやってんの?)


(素振り1000本だってさ。可哀想だねー)


(おい聞こえてんぞ!!)


(自業自得でしょ、頑張れー)


(クソがああああああ!!!)




(………左之、お前また元気ねぇぞ。最近どうしたんだ?)


(…………いや、なんでもねえよ、新八。)
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