ヒロアカ『Anemone』

□No.5
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──── 一応入学初日ということもあってか、今日は体力テストだけで学校は終わった。

帰る準備をしていると、無言で立ち去る勝己の姿が目に入る。




名前「えっ、ちょっと……勝己?」




当然帰りも一緒だと思っていた私は驚いて彼を呼び止める。

いつもなら、「さっさとしろクソ女!遅せぇよカス!!」とか言ってくるのに。


勝己は私の方を見ることもなく、そして各々付近の席の人と仲良くなり始めているクラスメイトにも目をくれず、教室を出ていってしまった。



……今日は、1人にしておいてあげた方がいいかな。

たまにはそんな日もあるよね。

出久はロボ眼鏡君と一緒に帰ったみたいだし、私は一人で帰ろうかな。



さて、これから嵐太と風優を児童館に迎えに行かねばならない。

いつもは勝己も一緒だったから、嵐太達寂しがるだろうなぁ……。


ちょっと寂しい気分になりながら、よいしょと席を立ち上がったときだった。




?1「……ね、ねえ!ちょっと!」


名前「ん?」




トントンと肩を叩かれて、私は振り返る。

そこに居たのはクラスメイトの女の子で……。

って、この子確か……!




?1「あ、あのさ……ウチの事、覚えてる?」


名前「あっ、入試の時の!覚えてる覚えてる!怪我は治った?」


?1「うん、リカバリーガールのお陰ですっかり」


名前「そっか、良かったー!」




その子は、私が入試の時に手当てをした女の子だった。

今日一日過ごしたのに、どうしてこの子に気づかなかったのだろう。

多分色んなことで頭がいっぱいだったせいもあるのだろうけど。




?1「あの時は本当にありがとう。ウチ、あんたにずっとお礼言いたくてさ」


名前「いいよいいよ、お礼なんて!当たり前のことをしただけだよ。……私の方こそ、ありがとね」


?1「ん?う、うん……?」




この子も受かっていたのか、本当に良かった。

それに私もこの子を助けていなかったら、レスキューポイントが入っていなかったわけだし……。


私もこの子に助けられているのだ。

そのお礼を言ったつもりだったのだが、その子はよく分からないというように首を傾げていた。


だけどすぐにニコッと笑ってくれる。




耳郎「ウチ、耳郎響香。あんたは名前だっけ?」


名前「うん、風花名前だよ!これからよろしくね」


耳郎「うん、よろしく。もし良かったらさ、一緒に帰らない?」


名前「えっ、いいの!?帰る帰る!」




思いがけず、一人寂しく帰ることは免れた。

響香は凄くさっぱりした性格の女の子で、良い子で面白くて、帰り道はずっと笑い声が絶えなかった。


勝己の事が少しだけ気がかりだけど、私は響香との会話に夢中になっていたのだった……。
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