薄桜鬼『桜恋録』1
□No.17
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〜 no side 〜
藤堂「遅ぇなー君菊さん」
永倉「名前ちゃんも来る気配ねぇな…」
こちらは部屋に入って20分ほどが経とうとしていた。
しかし料理は運ばれてきたものの、肝心の芸妓がやってこない。
そして名前も戻ってこないのだ。
しかも、名前の料理も頼んだはずなのに、何故かそれは来ていないのである。
原田「……ま、そのうち来るだろ」
気長に待とうぜ、と原田が呟いた時だった。
スーッ と静かに襖が開く。
そこでは、2人の芸妓が礼をしていた。
永倉「おっ、きたきた!」
君菊「だんはん方、お待たせしてすんまへん。ようおいでにならはりました。
だんはん方のお相手をさせていただきます、君菊どす。どうぞ楽しんでおくんなまし」
藤堂「待ってました!」
永倉「よっ、日本一!」
藤堂と永倉は猪口を掲げ、威勢よく声を上げる。
原田も口元に笑みを浮かべて、その光景を見ていた。
君菊「……さて……今日はウチの他にもう1人いてはります」
?「……おっ…おばんどすえ…」
永倉「おっ、新入りか!?」
藤堂「よっ、頑張れー!」
その新入りらしき芸妓が、ゆっくりと顔を上げた。
名前「……し、新入りの………名前どす。ど、どうぞ…楽しんでおくんなまし……」
藤堂・永倉・原田「「「………え………?」
」」」
藤堂の手から、空っぽの猪口が転がり落ちた。
その芸妓は紛れもなく、煌びやかな着物に身を包んだ名前だったのである。