薄桜鬼『桜恋録』1
□No.17
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〜 名前 side 〜
原田「 ──── じゃあ結局、食いもんに釣られたってわけか」
自分の猪口を差し出し、左之さんはくつくつと笑いながらそう言った。
名前「だってタダ飯だよ!?(涙) 誰だって食べるよそりゃ!それに、食べたあとに言われたの!!!」
そんな左之さんにお酌をするのは、もちろん私である。
……何故こんなことになっているかというと、私が大量のご馳走をほとんど平らげた後のことだった。
W君菊「……実は今日、お客はんがぎょうさん来とって人手が足らへんのどす。あんさん、手伝ってくれへんやろか」W
しまった、と思った。
あんなご馳走をタダで食べさせてもらっておいて、さすがに何もしないわけにはいかなかったのだ。
永倉「ハッハッハ!さすが君菊さん、名前ちゃんの弱点を一瞬で見抜くなんてな!」
名前「笑い事じゃないんですけど!!!」
君菊「あんさんには、ほんまに申し訳あらへんことをしました……」
名前「何を言いますかい君菊さん、あなたの頼みならこの苗字名前、いつでも一肌脱ぎますぜ」
君菊「あら、頼もしい」
藤堂「本当に美女に弱いんだな名前は……でもまあせっかくだし、オレにも酌してくれよ、名前」
名前「う〜……」
私は重くて歩きにくい着物に苦戦しながらも、何とか平助のもとへ行きお酌をする。
そんな私の様子を、左之さんがじっと見つめていたとも知らずに……。
君菊「(……あら……もしかして…)」