薄桜鬼『桜恋録』1

□No.10
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……長い長い回想でしたが、こうして斎藤さんによる授業が始まったということなのです。



これは1週間前の出来事だったんだけど、そこから毎日斎藤さんによる授業があった。


斎藤さんは巡察から帰ってきて私に稽古を付け、その後にこのお勉強。

夕餉の時には授業は一旦中断されるが、夕餉を終えて風呂に入り終わった後、就寝時間ギリギリまで続く。


これをほぼ毎日だ。


タフすぎるんだってば斎藤さんは!!!

なんなのこの人!!どんな体してんの!?


そして、稽古でボロボロにされた後で受ける授業が身に入るはずもなく。




──── バチーンッ!!




名前「いでええええええええっ!!!」





……そして、冒頭に至るというわけだ。


私が眠る度に、斎藤さんは物差しみたいな木の板で私の手や肩を叩いてくる。

手加減はしてくれているんだろうけど、これが痛いのなんのって。




斎藤「……よし。では次だ、昨日の復習だ。徳川家歴代将軍の名を述べろ」


名前「いてて……え?徳川家の将軍ですか」




参った、さっぱり覚えてない。

半分眠りながらやってたからな……。




名前「ええっと、歴代将軍ですね!はい、言います!はーい、いきますよ!ええっと、」


斎藤「早くしろ」


名前「は、はい。徳川家康……家康………家、康………」


斎藤「……あんたの中に家康公は何人いるんだ」


名前「1人です………」




ええい、仕方ない。

こうなったら、最後の手段。


──── 勘で穴埋め作戦!!!




名前「えぇっと……徳川家康……家太郎、家之助、家三郎、家二郎、家五郎、家助、」


斎藤「ふざけているのか?」




──── バチーンッ!!




名前「いだああああああ!!!」




くっそう、掠らなかったか。

『家』付けとけば当たるかと思ったのに。



仕方ない。

私は素直に、「すみません忘れました」と申し出た。




斎藤「それなら初めからそう言えば良いのだ」




そう言って斎藤さんは小さくため息をついた。

……なんかもう、こんなに出来が悪くてごめんなさい。




斎藤「…いいか、今度こそは覚えろ。徳川家歴代将軍 家康公、秀忠公、家光公、家綱公、綱吉公、家n」


名前「いやああああああああああああ」





──── 私の悲鳴が屯所中に木霊した……。
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