薄桜鬼『桜恋録』1
□No.12 A
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すると土方さんがため息をついて話し始めた。
土方「……お前を嵌めた奴らの処分についてだ」
………処分?
ま、まさか。
名前「ちょ、ちょっと待ってください!まさか切腹とかじゃないですよね!?」
すると、土方さんは眉間にシワを寄せた。
土方「斎藤から局中法度は教わっただろ、私闘は切腹だと」
名前「……わ、私は戦ってないです!向こうが勝手に仕掛けてきただけで、私は相手をしてません!これなら私闘になりませんよね!?」
土方さんがますます眉をしかめた。
すると、今まで黙っていた左之さんが「名前、」と私の名を呼ぶ。
原田「お前、奴らに何されたかわかってんのか。何故庇うんだ?」
いつもの左之さんの明るい声じゃない。
聞いたことがないような、怒りの混じった低い声。
………ごめんなさい、左之さん。
だけど、今回はあの人たちが一概に悪いとは言いきれないんだもの。
名前「……なんであの人たちがあんなことをしたのか、何となくわかるんです。ただの居候の身の私が、皆さんに近付きすぎたから……。隊士の人達は努力して皆さんに追いつこうとしてるのに。皆さんは隊士の人達にとって憧れの存在だったのに。……それなのに、隊士でもない私が皆さんの周りを彷徨いてたから……」
新八「名前ちゃん……」
名前「私が、皆さんとの関わり方を間違ったから。全部私が原因で起こったことなんです、今回のことは」
藤堂「そ、そんなこと言うなよ名前。な?」
平助が焦ったように私の背中を撫でてくれる。
ありがとう、平助。
名前「だから、お願いします。あの人たちを殺さないでください」
そう言って私は、頭を下げた。
……もし、私に非が無かったら、こんな事は言わなかった。
切腹なんかさせないで、私が奴らをぶっ殺しに行った。
でも、違うんだ。
悪いのは、私なんだ。
近藤「……苗字君、頭を上げてくれ」
近藤さんにそう言われ、私は頭をあげた。
近藤「……確かに、君の言い分もわからないわけではない。しかしだな…」
山南「……私も、彼らの処分自体に文句はありません。ですが、もっと早くに苗字君の身を隊士達に説明して、彼らに納得してもらうべきでしたね。それはこちらの落ち度かもしれませんね、土方君」
土方「……ったく、」
土方さんは大きなため息をついた。
幸せ逃げますよ、とは言わないでおく。
土方「……一度、俺と近藤さんと山南さんで話し合う。お前らは一旦戻れ」
名前「………はい」
私と左之さん、新八っつぁん、平助は部屋の外に出る。
重苦しい雰囲気の中、平助が口を開いた。
藤堂「……オレ、嫌だぜ。名前と呑めなくなるの」
名前「……平助」
永倉「俺だって嫌だぜ、名前ちゃん。気にしねえで、これからも声掛けてくれよ。な?」
名前「………でも、」
永倉「きっと土方さんが何か考えてくれるさ」
名前「………うん」
藤堂「お前が俺を避けても、オレは酒持ってお前の部屋に押しかけるからな!」
名前「……うん」
2人の言葉に泣きそうになっていると、ポン、と大きい手が頭に乗せられる。
名前「……左之さん」
原田「俺もこいつらと同じ意見だな。……優しすぎるんだよ、お前は」
そう言って左之さんは、ワシャワシャといつものように私の頭を撫でる。
その声のトーンはいつもの左之さんに戻っていたので、私はホッとするのだった……。