薄桜鬼『桜恋録』1

□No.14 @
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どういう風の吹き回しかわからないけど、土方さんが外出許可のチャンスをくれた。

しかも地図を見る限りだと屯所からそんなに離れてはいないので、指定の時間内には余裕で戻れそうだ。


あれかな、ここ数週間は2日に1回のペースで頼みに行ってたから少しは考えてくれてたのかな。

我ながら、頑固汚れもびっくりのしつこさだよ。


よーし、頑張って外出許可ゲットするぞ!!

てかこんなの余裕だし!!



私はるんたるんたとスキップしながら歩いて行く。


……すると、




?「……何するのよ!!……」




女の子の声が聞こえた。

一瞬、『寄り道をするな』と般若顔で言う土方さんの顔が浮かんだが、そんなことは気にしていられない。


声のする方を見ると、綺麗な着物を着た可愛らしい女の子が、ガタイのいい男に腕を掴まれていた。

男のもう片方の手には色鮮やかな巾着袋が握られている。




「はっ!女のクセになかなか金持ってんじゃねーか、生意気な野郎だ」


?「返しなさい!!」




……どうやらあの男は、女の子からお金を奪い取ったらしい。

女の子は男を睨みつけているが、男に腕を掴まれているせいで身動きが取れないようだ。


なんてひどいことを!!




名前「ちょっと、アンタ!」


「ああ?」




私はズカズカとその男に歩み寄る。




名前「何考えてるの、今すぐそれをその子に返しなよ!」


「ああ?この女がぶつかってきたのに謝りもしねえから慰謝料だよ、慰謝料!」


名前「はあ!?」


?「ぶつかってきたのはそっちじゃない!」


「うるせぇ!!!」




ハッ!と鼻で笑って、私に向かって巾着袋を振ってみせるその男。


……ぷつん、と私の中で何かが切れる音がした。

左之さんに似て短気になってきたのかもしれない。


私はズカズカとさらに男と距離を詰める。




「ああ?何か文句でもあるのか?」


名前「別に。ただ、お金よりももっといいものをあげようと思って」




私はそう言うと、男の股間を力いっぱい蹴り上げた。


ドガッという鈍い音がして、男は目を見開く。

そして男は痛みに耐えきれずそのままうずくまってしまった。



私は瞬時に男から巾着袋を奪い返すと、女の子の手を引いて思い切りダッシュし、その場を去ったのだった……。
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