薄桜鬼『桜恋録』1

□No.14 A
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千姫「名前ちゃん………」




私は腹を括って、男をキッと睨みつける。


……長期戦に持ち込まれたら、女の私に勝ち目はない。

腕力も体力も体格も、何もかも奴に劣っているからだ。


──── でも、何としてでも倒す!!!




「ぐっ…………」




何故かその男は顔を顰めると、少しだけ後退った。

しかしそれも束の間のことであった。




「うおおおおおおおお!!!!」




男が雄叫びを上げて刀を振りかざしてくる。


──── きた!!!!




千姫「名前ちゃん!!」




私は瞬時にその攻撃を交わす。




「ちっ……!」




私はほんの一瞬、男がバランスを崩したところを見逃さなかった。

瞬時に私は懐から苦無を2本取り出し、男の両手にめがけて投げつける。



──── ドスッ ドスッ




「ぐっ、ああああああああ!!!」




どうやら2本とも命中したようだ。

近距離で投げたためかなり深く突き刺さったらしく、男の手から血が吹き出す。


うっ……気持ち悪い……。


だが、そんなことを思っている場合ではない。




名前「おりゃああああああああああ!!!!!!」




私は刀を振りかざし、男の刀に向けて力いっぱい叩きつけた。

ガキイィィン!という金属音が響き渡り、刀は男の手から放れて地面に叩きつけられる。




「このっ………ガキッ………!」




男が拾う前に、私はその刀を蹴飛ばした。

そして男が刀を拾おうと手を伸ばした瞬間を狙い、私は自分の刀の柄で力いっぱい男の鳩尾を殴る。




「ガハッ………」




男はフラフラとした足取りになった。

鳩尾を抑えて、前かがみの姿勢になっている。




W斎藤「 ──── 一撃を加えたからと言って、相手の意識がある限りは油断するな 」W




頭の中で、斎藤さんの言葉が木霊する。




名前「 ──── 斎藤さん!!あなたの教えを守りましたああああ!!!」




そう叫んで私は、刀を柄を今度は男の人中に叩きつけた。




「ぐあっ…………」




男はうめき声をあげると、ドサッとその場に倒れ込む。


……た、倒した……のか………?


男は倒れたまま、ピクリとも動かない。


さすがに死んではいない……よね?




千姫「 ──── っ名前ちゃん!逃げるわよ!」


名前「う、うんっ!」




千姫の声で私はハッと我に返る。

そして今度は千姫に手を引かれて、一目散にその場から走り去るのだった……。
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