薄桜鬼『桜恋録』1

□No.19 @
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その声は、店と店の間の狭い路地の奥から聞こえた。



……駆け付けてみると、そこには。

尻もちをついている男の人と、その男の人にくっついて震えている小さな男の子。


2人の前には、かなり体格のいい男が立っており、2人に剣を向けていた。


しかもその剣からは、血が滴っている。

よく見れば、尻もちをついている男の人の腕からは、大量の血が流れているではないか。


私は咄嗟にその人たちを庇うように、男の前へと立ちはだかった。




「……あ?なんだぁ?お前は」


名前「なんだぁ?じゃないよ。どうして無抵抗の人間を斬ったの?」


「ああ!?」




男は私の言葉にブチ切れたようで、眉間にシワを寄せた。

だが、私はこんなことで怯むような人間じゃない。




名前「何が尊王の志士だ、アンタのやってることは不逞浪士と同じだよ!!」


「きっ……貴様、俺を愚弄するか!!!」




その瞬間、男が刀を振り上げた。

咄嗟に私は2人を庇うように覆い被さる。


き、斬られる………!!!


覚悟を決めて目をつぶった、その時。




──── キィィンッ……!!




刃物のぶつかり合う音がした。

ハッとして顔を上げれば、そこには、




名前「 ──── 左之さんっ!!」


原田「……ったく、無茶しすぎだお前は!」




左之さんが私たち3人を庇うように立っており、自身の刀で男の攻撃を食い止めていた。


てか、左之さんが槍じゃなくて刀で戦ってる!!

これ結構レアじゃね!?


なんてことを、こんな状況で考えられる私もどうかしている。



……やばい、この人の止血をしなきゃ!!




名前「大丈夫ですか!?」


「うぅっ………」




私は懐から手拭いを出す。

……男の人の腕からとめどなく溢れ出る鮮血に、ゾワッと鳥肌が立った。




「父上っ……」


名前「僕、大丈夫だよ。今手当するからね」




子供を不安にさせてはいけない。

私は吐き気を必死に堪えながら笑顔を作り、止血を始めた。


チラリと左之さんの方を見れば、左之さんは力ずくで男を押し返していた。




「ちっ……なんだ、ちったァ骨のある奴が来たじゃねえか」




負け惜しみとかダサいよ、と口を出そうとしたその時。


男が、脇差を抜いた。
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