薄桜鬼『桜恋録』1

□No.19 @
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〜 原田 side 〜



原田「ちっ…………」




最初に刀を交えた時点で、こいつが只者ではないことには気付いていた。


……だが、今日はなんだか思うように体に力が入らねぇ。

俺は狭い路地の一角で、男の2本の刀を食い止めていた。



……ここで、死ぬわけにはいかねぇ。

名前に、みっともねえ姿は見せられねえ。


名前は、俺を信じてこの場を任せてくれたんだ。

そんな彼奴を、裏切るわけにはいかねえんだ。

ここで負ければ、新選組十番組組長の名が廃れる。


そう思うと、刀を握る自分の手に力が入る。



しかし男が、一方の刀を振り上げた。


………これは、まずい。

咄嗟にその刃を、手で受け止めようとした時だった。




名前「 ──── ああああああっ!!!!!!」




名前の、叫び声が聞こえた。

ただ事ではないような、その悲鳴。


……何かあったのだろうか。

まさか、こいつの仲間が近くに?




原田「名前っ…………!?」




彼女の名前を口にした、その時。



──── ドスッ……



鈍い音が響いた。

それと同時に、いきなり男の力が緩む。



──── そして目に入ったのは、男の左胸から突き出ている刃だった。


………刃?

名前に任せた男は、帯刀していなかったはずだ。

それにもちろん、二刀流の男の刀でもない。



──── まさか。


ズブッ……という音がして、男の体から刃が引き抜かれる。


男の手から、2本の刀が滑り落ちた。

そして、ドサリ、という大きな音を立てて男はそのまま倒れてしまった。



………目の前の光景に、俺は目を見開いた。




原田「…………………名前、」




──── そこに立っていたのは、

呆然とした表情で赤黒い血の滴る剣を握りしめる、名前だった。


その顔や体には、返り血が飛んでいる。

名前は、腰を抜かしたようにへなへなとその場に座り込んだ。


……我に返るのは、俺の方が早かった。




原田「 ──── 名前っ!!!」



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