薄桜鬼『桜恋録』1

□No.20
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〜 no side 〜




──── 名前が部屋に引きこもるようになって、1週間ほどが経った。



この1週間、土方と原田、そして千鶴以外は名前に会っていなかった。

他の幹部達は、土方から「今は名前に関わるな」と釘を刺されているためである。



……しかしたった1週間で、屯所の雰囲気はガラリと変わってしまった。

幹部達の元気が、明らかにないのだ。


今は夕餉の時間であるが、誰も一言も喋らない。

これが1週間も続いていた。



……この状況に、最初に耐えかねたのは藤堂であった。




藤堂「……よーし、今日こそは新八っつぁんのその魚奪ってやるからな」


永倉「………え?………お、おう。やれるもんならやってみろ」




そう言った永倉の声には、やはり覇気がない。

そんな永倉の様子に、藤堂も再び押し黙ってしまう。


そんな藤堂の頭には、1週間前までは当たり前だった光景が思い浮かんでいた。





W永倉「うし!魚は頂くぜ!!」


藤堂「あー!新八っつぁん何すんだよ!」


永倉「弱肉強食の世界だからな!ガハハ!」


名前「ギャハハハ!平助ってば、また新八っつぁんに取られてやんの〜!」


藤堂「うるせえな!新八っつぁんもオレのばっかり狙いやがって!」


名前「ねーごめんって!平助、私のお魚食べていいよ」


藤堂「え?でも……」


名前「私、さっきお饅頭食べたからお腹いっぱいなの。ほれ」


藤堂「………ありがとな、名前」


名前「なんだよ水臭ぇな!気にするこたねえよ!」


藤堂「今の、新八っつぁんの真似!?似てる!!」


名前「でしょ!」W






いつでも笑顔を絶やさなかった名前。

そんな彼女の笑顔は、この屯所の太陽であったのだと今更ながら思い知らされる。


……明らかに沈んでいる雰囲気に、土方は大きなため息をついた。




土方「………ったく、仕方ねえな……」




ボソリと呟くと、土方は席を立ち上がる。




藤堂「……土方さん?どこ行くんだ?」




藤堂のその問いには答えず、土方は部屋を出ていく。


土方にしては珍しく、名前に声をかけるだけかけてみようと考えたのだ。

食事の席までああも重苦しいと、たまったもんじゃない。



土方は名前の部屋まで来て、障子越しに声をかける。




土方「 ──── おい、苗字。いるか」




聞かなくても、いるはずなのだが。

しかし、名前の返事はない。




土方「……ったく。おい、苗字。入るぞ」




そう言って土方は障子戸を開ける。


……だが、目の前の光景に思わず叫んでいた。




土方「 ──── っ! 苗字!!!」





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