ヒロアカ『Anemone』

□No.2
1ページ/7ページ



〜 名前 side 〜



──── 今日はいよいよ、雄英高校の入試当日だ。


嵐太と風優の朝ご飯も作らなければならないし、余裕をもって会場に行きたいから今朝はいつもよりも早く起きた。


昨日からソワソワしていたが、自分は割と遠足の前日でも普通に眠れるタイプである。

だから幸い睡眠不足にはならなかった。



しかし、いつもと違ったことが一つだけあった。


それは……。




母「おはよう、名前」


名前「……えっ、お母さん!!?」




朝起きたらお母さんが帰ってきていたこと。

今は九州の方に行っていると聞いていたし、帰って来ない日の方が多いから、物凄くびっくりした。




名前「ど、どうしたの!?何かあったの!?」


母「ふふふ、だって今日は貴方の受験日じゃない。私ね、お弁当を作ったの。お腹が空いたら食べて」


名前「えっ……あ、ありがとう……」




手渡されたのはお弁当を入れたバッグ。

普段はコンビニで安いパンを買って行っていたから、お弁当なんていつぶりだろう。


きっと仕事で疲れているのだろう、お母さんの目の下の隈が凄い。

お弁当なんていいのに、せっかく久しぶりに帰って来たんだから休んでいればいいのに……。


すると、白い手が伸びてきて私の頭を優しく撫でた。




母「……いつも傍にいてあげられなくてごめんなさいね、名前。だからせめて、このくらいはしたくて」


名前「……お母さん……」


母「受験、頑張って。貴方のやりたいようにやりなさい。全てが上手くいくように心から願ってるわ」




持たせてくれたお弁当バッグをぎゅっと握りしめる。


私、絶対合格するから。

雄英に入って、お母さんみたいなヒーローになるから。

嵐太と風優は勿論、町の人達を守るヒーローになるから。




名前「……ありがとう、お母さん」




母の優しい微笑みをしっかりと目に焼き付ける。

次はいつ会えるかわからないし。




母「いいえ、お礼を言うのは私の方よ。いつもありがとう、名前。信じて待っていてくれて」


名前「……うん!」




首元に下がるアネモネのペンダントが、キラリと光った。



そして私は準備を始める。

久しぶりにお母さんの作ってくれた朝ご飯を食べて着替えて、身だしなみを整えて。


暫くすると、嵐太と風優が起きてきた。

お母さんが帰って来たと知り、2人は大喜びだった。


喜ぶ2人を横目に準備を済ませた頃、ピンポンとインターホンが鳴った。




母「あら、誰かしら」


名前「あ、多分勝己だよ」


嵐太「かっちゃん!!」


風優「かっちゃんだ!!」




私はいつも、勝己と登校をしている。

受験日の今日だって、普段通りだ。



私は、小さい頃から勝己と一緒に行動することが多い。

私が傍に居れば勝己の周りの気温を上げられるから、勝己が私をどこに行くにも連れ出すのだ。

だからいつの間にか、彼と一緒にいる事が当たり前になっていた。



お母さんと嵐太と風優と一緒に出迎えれば、勝己は少し驚いたような顔をした。

お母さんが滅多に帰って来ないことを、勝己も知っているから。

勝己に抱き着く弟たちを何とか離す。


そしていってらしゃいという3人の声を受けながら、私は勝己と共に家を出た。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ