Free! 男主
□プロローグ
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ーーー トロフィーと賞状を両手に抱え、嬉しそうに笑う少年。
もうそれは、5、6年も前に撮られたであろう、俺の写真だった。
これは、岩鳶スイミングクラブに通っていた頃、IMで優勝した時のものである。
ーーー この頃は、何も考えずに自由に泳げていたっけ。
俺は、自分の写真の隣にある写真に目を移した。
ーーー 楽しそうな、4人の少年たち。
その無邪気な笑顔に、俺はフ、と目を細めて微笑んだ。
古びた壁に貼られたその写真を優しく撫でる。
ーーー 凛、元気でやってるかな。
赤髪の少年の笑顔に、俺は懐かしさを感じていた。
ーーー その時だった。
… カタンッ
夏輝「っ!?」
後ろから突然物音がして、俺は思わず凍りつく。
廃墟、それも取り壊しの決まったものに無断で立ち入ったとなれば、学校でそれなりの指導をされるだろう。
ーーー しかし、ふわりと香った、懐かしい匂い。
俺は、ハッとして振り返った。
そこには、
夏輝「…凛」
ーーー アイツが、いた。
凛「……ナツ……」
何故か掠れた声、強ばった表情の凛。
だけどそんなものは気にならないくらい、俺は嬉しさを感じていた。
つかつかと凛に歩み寄り両手で凛の手を掴むと、ぶんぶんと大きく上下に振る。
夏輝「久しぶりじゃねーか凛!
ったく、帰ってきてたなら連絡よこせよなー!
どうだ、調子は? 元気にやってたか?」
ーーー パシッ
夏輝「…え、」
突如、乱暴に振り払われた俺の手。
そして、キッと鋭い目つきで睨まれる。
凛はそのまま、何も言わずに去って行ってしまった。
ーーー 変わったのは、俺だけじゃない。
ーーー アイツもだったんだ。