Free! 男主

□No.1
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夏輝「…水泳部?作ったのか?」


渚「うん!今度ね、鮫柄学園って所と合同練習することになったんだけど部員足りなくて…。

ナッちゃん、IMすごく速かったじゃない!

ねぇ、一緒にまた泳ごうよ!」


夏輝「…あのなぁ」









明るい茶髪をぴょんぴょんとはねさせて言う葉月渚に、百瀬夏輝は小さくため息をついた。










夏輝「俺はもう、水泳辞めたの。

真琴から聞いてんだろ、中1以来もう泳いでねぇんだ」


渚「ナッちゃんなら絶対全国行けるよ!」


夏輝「オメーは人の話を聞けこの!」


渚「いだいいだい!!ひゃめひぇひょ〜(やめてよ〜)」


夏輝「ハハッ、変な顔!

って、いだだだだ!!!」









みょーんと効果音がつきそうなくらい、渚のほっぺを引っ張る夏輝。




渚も負けじと夏輝のほっぺを引っ張る。





もはや変顔大会だ。











遙「…何やってるんだお前ら」


真琴「やめなよ渚、ほらナツも!」


夏輝「ちぇ」









呆れたように2人を止めに入ったのは、七瀬遙と橘真琴だ。








真琴「渚、ナツはもう水泳やめたんだよ、無理にやらせるのはよくないよ」


渚「え〜…」







しょぼーんとした表情になる渚。







渚「…じゃあ、マネージャーとかでもいいk」


夏輝「やらねぇ」


渚「即答!?」







ガックリと肩を落とした渚。








もうすぐ授業が始まるせいか、渚はとぼとぼと帰って行く。









夏輝「…ありがとな」









夏輝が少し困ったように笑うと、真琴はいいよいいよ、と優しく笑った。







遙は相変わらずそっぽを向いている。










真琴「…そう言えばナツ、なんか最近元気ないみたいだけど…」


夏輝「え、」









真琴の言葉に即座に反応したのは、意外にも遙であった。









遙「…まだ、痛むのか?悪くなってるのか?」








いつになく心配そうな表情の遙に、夏輝は違う違うと笑ってみせた。









夏輝「ったく心配性だなーハルは。

いつの話してんだよ全く!

真琴も、何でもねぇから心配すんな」


真琴「…そう?だったらいいんだけど…」








真琴はそう言ったものの、まだ少し気になっているようだ。





…だが、少し寂しげな表情の夏輝を見ると、それ以上は何も言わなかった。





















ーーー 俺の背中と脇腹、左足には、大きな傷がある。




4年前に巻き込まれた、交通事故が原因だ。






居眠り運転の大型トラックが、突っ込んできた。








医者からは、泳ぐことや激しい運動を禁じられた。








でもそれは、数ヶ月リハビリをすれば運動をしても大丈夫になるらしい。












でも俺は、リハビリをせず、水泳から離れた。











この痛々しい傷跡を見るのが嫌で怖くて、











ーーー アイツに、申し訳なくて。













水泳が嫌いになったわけじゃない。




今でも好きだし、泳げるのなら泳ぎたい。











…でも、泳げないんだ。
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