薄桜鬼『剣舞録』第一章(黎明録)
□第6話
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──── その翌日。
私は何度も総司君の部屋の前に行ったんだけど留守だったり、居ても顔を見せてくれなかったりで、結局謝ることができなかった。
他の皆も、今日は総司君と顔を合わせていないらしい。
お前で無理ならみんな無理だって新八っつぁんが言ってたけど、そんなことないと思うけどな……。
私が一方的に怒っちゃったから、総司君は私に怒っているはずだし。
─── そしてその日の夜。
私は龍之介と一緒に歩いていた。
龍之介が酒を買いに行くというので、土方さんのお使いに行く予定だった私も同行することにしたんだ。
土方さんに、なるべく1人で歩くなって釘を刺されているし。
……だが、先刻からお互い一言も話さない。
いや、私が明らかに落ち込んだ雰囲気を出しているからなんだよね。
ごめんね龍之介……。
龍之介「……な、なあ。何かあったのか?」
空気に耐えかねたのか、龍之介が私の顔を覗き込んでくる。
龍之介「あんたが静かだと、なんだか調子狂うんだが……」
名前「……いつも煩くてすみませんね」
龍之介「え!?ああ、いや、そういうわけじゃ……」
わたわたとする龍之介を見てクスリと笑えば、彼も少し安心したような表情をしてくれる。
名前「………総司君に謝りたいんだけどさ、何回部屋を訪ねても口聞いてくれなくて」
龍之介「……喧嘩でもしたのか?」
名前「……ああ、昨日のことを覚えてないならいいんだよ」
龍之介「……?」
名前「………なんか、昔に逆戻りしちゃったなーって……」
すっかり日の沈んだ空を見上げながらポツリと呟く。
龍之介は、少し不思議そうな顔をした。
龍之介「……あんた達は、昔は仲が悪かったのか?」
名前「うん、そうだよ。物凄く悪かった」
龍之介「へえ……想像もつかないな」
そうだろう、そうだろう。
今の私と総司君は、誰が見ても仲がいいはずだし。