長編


□第五話
10ページ/10ページ

次の日香が中庭を歩いていると、一年は組の子達が土井先生を囲んでやいのやいの盛り上がっているのを見つけた。

「こんにちは!今日はお外で授業ですか?」

声をかけると、土井先生を取り囲んでいた子達は土井先生の後ろに周り香の方へとぐいぐい押しやった。

「お前らなぁ!!いい加減にしろ!」
「ほらほら!土井先生!!」
「照れるような歳じゃないでしょ!」

「どうしたんですか?」

「いや、な、なんでもないんです!全然気にしないでください」

土井先生は慌てて手をブンブン振り、背中を押してくるは組の子達を掴み上げてそのまま教室へと行ってしまった。
足にも何人か捕まっているが気にも留めずにずんずんと歩いて行ってしまった。
それを見送り、首を傾げていると山田先生が笑いながら香に声をかけた。

「山田先生」
「いやはや、騒がしいところをお見せしてしまって」
「いつも元気がいっぱいで。さっきは何で盛り上がっていたんですか?」
「土井先生のことを香さんにアピールしておったんでしょうな」
「私に…?ですか?」
「ま、気にしないでください。半助はあのように子供達にも好かれてますし気のいいやつなんですよ」

まるで息子を思うような顔で話す山田先生に、香もクスッと笑い「そうですね」と答えた。



一方、それをたまたま見ていた八左ヱ門は隣で虫を愛でる孫兵の袖をくいっと引っ張った。

「おい、孫兵」
「なんですか?」
「あいつら昨日は俺を応援するとか言ってなかったか?」
「なんか土井先生の方が総合的に相応しいって一年生の間で決まったらしいですよ」
「んだよそれぇ!」
「…僕は先輩がその気でしたら応援しますよ」
「孫兵〜〜…ありがとなぁ〜〜…」
「あ、先輩、この子達飼ってもいいですか?」
「…お前な…」


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ