長編


□第七話
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梅雨が明け、本格的に暑くなり忍術学園は夏に包まれた。

「あ〜〜〜〜つ〜〜〜〜い〜〜〜〜」

みんな暑さにやられ、日陰で休んでいる姿が増えた。
香はその一人一人に西瓜を一切れずつ配って歩いた。

「長次くん、小平太くん、どうぞ」
「おお!!!すみません!ありがとうございます!!」
「…ありがとうございます」

小平太は上半身裸ですっかり日焼けで黒くなっていた。
香が来たからか長次は小平太に上着を投げて着るように言った。

「いいよ、あちぃもん」
「小平太、女性の前だ」
「あ、私はまだ配ってくるから、長次くんありがとう」

香はニコニコ笑って沢山の西瓜の乗った大皿を持って次の日陰へ向かって歩いた。
次の日陰では留三郎と守一郎と作兵衛が頭に手拭いを巻いて桶の修理をきていた。

「お疲れ様。これ食べて休憩してね」

香が近づくと三人は嬉しそうに笑って西瓜を手にした。

「ありがとうございます!」
「重そうですね、俺手伝いますよ」
「大丈夫よ」
「いや、香さん、良かったら守一郎のやつ使ってやってください」

留三郎がそう言うと守一郎も笑って胸を叩いた。

「じゃあ少し手伝ってもらおうかしら」

香は素直に甘えることにし、大皿を守一郎にお願いした。

「次はどこですか?」
「次は生物委員会と火薬委員会の方に」
「はーい」

二人が歩いていくのを見て作兵衛は留三郎に話しかけた。

「香さん、最近元気になったと思いません?」
「ん?」
「いや、ちょっと前あまり元気無かったから…」

先日の件は上級生しか知らず、三年以下の下級生達には知られないよう箝口令が敷かれていた。

「元気ならいいじゃねえか」

留三郎はそう言って西瓜の種を飛ばした。

「まあ、そうなんすけど」

作兵衛は留三郎の表情をじっと見つめて、何も情報は得られないと判断し諦めて同じように西瓜の種をぷっと飛ばした。
香が元気のない時、やたら先生の出張、上級生の実習が増えたような気がした。
三年の間でも何があったのか探っていたが、結局何も手掛かりは得られず今に至る。
数馬が「香さんを助けようとして不破先輩が怪我して帰ってきてからだから、あの件が関係してるはずなんだけど」と言っていたが、肝心の何故香さんが狙われたのか、は分からずじまいだった。
同じ委員会の先輩から探るも、流石は先輩でさりげなくかわされてしまう。

食満先輩はともかく、浜先輩も知っているようだったけど結局教えてはくれなさそうだな

作兵衛は三年と四年の一年の差がこんなにもでかいのかとため息をついた。

「…早く上級生になりてぇな…」

強くなりたい、頼られるようになりたい。
そんな思いでぽろっとこぼした言葉だったが、まさか。

「…それは俺にさっさと卒業しろってことか…?」

眉を下げ涙目で作兵衛を見つめる留三郎に、作兵衛は慌てて、違うそうじゃない!と手をブンブン振った。
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