長編


□第八話
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「うわぁ〜〜なになに。どうしたのそれぇ」

小松田さんは突然現れた女装の五年生にドン引きした様子でどうしてそんなことに、と聞いた。

「色々あったんですよ」

イラッとした様子の三郎が答えた。

「三子さん、ダメよ、もうテストは始まってるのよ」

勘右衛門、もとい勘子さんがなんとか出した可愛い…可愛くしようとしている声で注意をした。

「…す。すみません。なんかこんなことになってしまって」

香に頭を下げたのは雷蔵…雷子だった。

「……んふっ」

申し訳なさそうな顔の雷子に、香は堪えきれずに吹き出してしまった。

「んふふふふご、ごめんなさい、んふふふふふ」
「香さん、笑いすぎですわよ」
「あははははははは!!!!ごめんなさ…あははは!!!!」

香はお腹を抱えて笑った。

「まさかそういうテストだとは…ごめんね、ふふふふ!!か、可愛いわよ」
「あらそお?」
「うふふ、ありがと」
「あははははははは」

「香さんめっちゃ笑うな」
「笑ってもらえたならまあいいか」

八左ヱ門と兵助はそう言って笑った。

「さ!行きましょう!お祭りお祭り〜〜」

八左ヱ門は香の背中をとんと押して、四人も可愛く笑って香の手を引いて出掛けていった。

「いってらっしゃ〜〜い」

小松田さんは六人に手を振って見送った。

「…香さんと並んだらすぐバレるんじゃないかなぁ」

五年生のテスト結果が可哀想なことになりそうだと、小松田さんは笑った。
その小松田さんの心配通り、道を歩く六人を見る通りすがりの人たちはちらりと視線を向けたあと、目を合わせないようにそそくさと離れていった。

「可愛いのに」

香がそう言ってちらりと隣の雷蔵を見ると、雷蔵はその視線に気がついてにっこりと微笑んだ。

「なあに?」
「ううん、雷子ちゃんの紅の色綺麗」
「ありがとう〜三子さんが貸してくれたの。ね?」
「ええそうよ〜〜雷子ったらちゃんと管理してないからカチカチになっちゃってたのよねえ」
「やだぁ言わないでよ三子さぁん」
「あははは」
「うふふふ」

二人は楽しげに話していて、少しガタイが良いところを除けば可愛い女の子に(香には)見えていた。

「…やっぱり本物の女の人と並ぶとバレバレだよなぁ」
「八子さん」
「バレバレよねぇ」
「兵子ですらなんかもう隠しきれてないもんね。兵子女装の成績いいはずなのに」
「やめてよ。結構本気で凹んでるんだから」
「豆腐食べて元気出しなさいな」

香達の後ろを歩く三人はため息をついて、ちらりと視線を交わした。

「…あれかな」

会話の中で矢羽根が飛び交った。
香はそれに気づかずに雷蔵と三郎のメイク談義に混ざり楽しんでいた。
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