長編


□第三話
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身支度を整え食堂に恐る恐る顔を出すと、おばちゃんは笑顔で受け入れてくれた。

「あら!!おはよう!元気になった!?」

香はぺこりと頭を下げた。

「たくさん休んですみませんでした!それで、あの、今日から仕事に戻りたいんですが…その」
「だめよ」
「えっ?」
「新野先生からちゃあんと聞いてますよ」

おばちゃんはにっこり笑って、香用に用意していた朝食を差し出した。

「消化のいいものにしたから。今日はゆっくり休んでなさい」
「あの」
「明日からはまた頑張ってもらうからね!」

明日は一年生と二年生の合同実習でお弁当作らないといけないから忙しくなるわよとけらけら笑って香の背中をバチンと叩いた。
少しふらついてしまったが、おばちゃんの優しさが嬉しくて香も合わせて笑った。

朝食を食べていると山田先生と土井先生が食堂にやってきた。

「おはようございます。あ、河嶋さん、具合はいかがですか?」
「おはようございます。なんとか元気になりました」
「だめよ、山田先生、間に受けちゃ。香ちゃんすーぐ無理するから」

カウンターの向こうからおばちゃんが山田先生に釘をさす。
同時に香にも釘をさしたわけだが。

「なるほど」
「新野先生に今日はのんびり過ごすよう言われていまして」
「それはいい」

にっこりと笑う山田先生に、香はそうだ、と言い一つお願いをした。

「今日、生徒さん達の授業を見学してもよろしいですか?」

山田先生と土井先生が目を丸くし、返事をする前におばちゃんが「それはいいわね」と賛成してしまった。

「う〜〜ん…教科はいいですが実技は危ないですよ」
「まあまあ。少し離れたところからなら大丈夫だろう。他の先生方にも話しておくので自由に見てやってください」
「あいつらもやる気出るかもしれませんしね」

快諾してくれた二人に香は頭を下げお礼を言った。
そして土井先生のお盆の上のかまぼこを「内緒ですよ」と言って代わりに食べてあげると、土井先生は満面の笑みで香の手を握りぶんぶんとふった。

「半助ぇ…」

山田先生は呆れたように笑っていた。
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