五年生 短編

□双忍と
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そんなわけで返事を一週間後の今日、しなければならないのであった。
悩む、と言っても二人と恋人になるというおかしな話到底受け入れられるわけがない。
でも、あの告白を受けてから妙に二人のことが気になってしまっているのも事実。
二人の恋人になれたら、という気持ちとそれを理性が否定をする。
そんな自分の中のやりとりをもう一週間も続けていた。

そして、約束の時間。
香は二人の部屋を訪れた。
部屋の前で深呼吸をしてから、意を決して声をかけようとした瞬間戸が開いてぐいっと手を引かれた。

「きゃっ」

どん、と勢いよくぶつかったのは雷蔵の胸の中だった。

「雷蔵くん」

「いらっしゃい」

雷蔵は香の手を掴み胸に収めたまま、にこにこと満面の笑みで目を丸くしている香を見つめた。

「雷蔵、抜け駆けはよくない」

三郎は雷蔵の肩に手を乗せ、香の髪に手を伸ばした。
さらりと指で髪を梳かすと、毛先を自分の唇に押し付けた。

「香さん、来てくれて嬉しい」

「は、はぃ」

香は顔が赤くなっていくのがわかり、下を向いた。

「早速返事を聞かせてくれますか?」

弾んだ声で雷蔵が聞くと、香はハッとし慌てて雷蔵の胸から抜け出した。

「あ、あの、そのことですが、やっぱり三人で恋人になるというのはちょっとおかしいというか」

あわあわと自分の中の理性を口にすると、もう一人の自分が「そうよ、やっぱりおかしい」と確信した。

「そう、おかしいの。だって恋人っていうのは二人で、で、夫婦だって二人だし、お父さんとお母さんは一人ずつで」

必死になって説明しているのに、二人はぽかんとした顔だ香を見つめていた。

「だ、だから、三人でって言うのは」
「おかしい?」

雷蔵は首を傾げて聞いた。

「お、おか、おかしいよ」
「おかしいかなぁ?」
「おかしくなくはないだろうけど」
「でもダメではないよね?」
「ダメではないだろ」
「おかしくなくはないかもしれないけど、ダメなことではないですよ?」

雷蔵と三郎はなんの疑問もないような晴れ晴れした顔で香にそう言った。
そんな顔で二人に言われると、確かにダメなことではないような気がする、と思ってしまった。

「で、でも」

「香さん、僕のことは好き?」

雷蔵は香の次の言葉を遮り聞いた。

「…す…、好き、す、…好きですけど」

「じゃあ私のことは?」

「…好き…です…けど!!」

「「じゃあいいじゃないですか」」

二人はそう言って、もう一度香を引き寄せぎゅっと二人で抱きしめた。

「香さんは幸せが二倍になりますよ」

二人にぎゅうっと抱きしめられると、確かに心が温かくなってドキドキして嬉しくて幸せだった。

「で、でも…」

それでもまだ理性がそれを否定する。

「香さん、頭で考えちゃあいけない」

それを察したのか三郎はそう言って香の頬に口付けをした。

「あっ!三郎ずるい」

雷蔵も反対の頬に口付けをし、にっと笑った。


「ちゃんと二人で」
「幸せにしますから」


そう言ってまたぎゅっと二人で香を抱きしめた。
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