幸せな夢

□お金はいらない
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お金はいらない1

あの人に会いたい。でも素直に会いたいと言い難い関係。それに相手がなにを考えてるのか全くわからない。雲みたいに掴めない人。でも掴まなきゃ何も変わんねぇんだよなぁ。

***

「君、それ欲しいの〜?」

先月、好きなブランド店の前で頭抱える俺にふわふわと彼女は話しかけてきた。茶色い髪に大きな瞳。真っ白な足が目立つ丈の短いワンピースを見に纏い可愛くて、どこかか妖艶な女の人だった。

「そうなんスよ〜、でもちょっと高くて手ぇ出せなくて来月まで残ってるか心配って感じで、大丈夫かなぁ〜」
「そっか、かっこいいねこれ、君に似合いそう」

そう言うと俺の隣に詰め寄ってきた。鼻腔に広がる甘くて何処か上品な香りに胸がドキドキと鳴った。

「ホントっスか?お姉さんにそう言われると嬉しい…」
「ねぇ、お金あげよっか?」
「は?」

不意に投げかけられた言葉はあまりに突拍子もなくて頭にうまく入ってこない。

「だから、お姉さんの言うこと聞いてくれたらお小遣いあげるってこと♡」

甘ったるい言葉と吸い込まれそうな瞳に抗えるわけなくその後は彼女のいうがまま。
夢見心地で初めての快感とお姉さんの肌の柔らかさに翻弄され頭がおかしくなったみたいだった。

「気持ちよかった、ありがとう♡またしてくれる?」

差し出されたお金にふわふわの思考が一気に現実に引き戻された。
俺は金でお姉さんに買われたらしい。
それから彼女から連絡があると身体を重ねてお金を貰うなんて非道徳的なことを何回か繰り返した。
実際お金なんてどうでもよくて俺はあの人に惚れている。こんな奇妙な始まりのせいで好きだと伝えても「わたしも好き〜」と返ってくるがその言葉は全くと言っていいほど本気とは思えない。雲みたいに掴めない。お手上げ状態と言ったところだ。

「と言ってもよぉ、当たって砕けろだよな…」

そう自分に言い聞かせると通話ボタンに手をかけた。

「仗助くんから連絡くれるなんて珍しいね?」
「リリさん会えないっスか?」
「また欲しい物あるの〜?でも、ちょっと今、手持ちがないから会うのはもう少し後でもいいかしら?」
「お金とかどうでもいいんです今から会えないっすか……?」
「仗助くんが良ければいいけど……」
「俺はいつも金は要らないって言ってるじゃあないですか!」
「あれ本気だと思ってなくて」

***

会いたかったと抱き締めると一瞬驚いた顔をしたがいつもと同じふわふわな笑顔で嬉しいと彼女は答えた。

「お金払わないのに仗助くんとエッチするなんて気が引けちゃう……」

別にエッチがしたいわけでなくて俺はリリさんに会いたかっただけなのに彼女は俺のことそういう目でしか見てないみたいだ。ストレートにぶつけてもラチがあかない。

「ならよぉ、今日は逆に俺がリリさんのこと買うってのはどうですか?」
「そういうプレイ?仗助くんも悪い子になっちゃったね」
「あんたのせいっスよ」
「ふふふ、じゃあ今日は仗助くんの好きにしていいよ?」

楽しそうに笑う彼女に一泡吹かせてやると心に決めてベッドに押し倒した。


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