Boys love

□雨ざらし
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「クリスマス、か…」

飾りも何もないシンプルなリビングの真ん中で、ターレスがポツリと呟く。
教徒であろうとなかろうと聖夜はこの国に於いても盛大に祝われる行事だが、この男がイベントなんぞに興味を示すのは珍しい。自分も人のことは言えないが。

「それがどうかしたのか?」
「まぁな。折角だし特別な愛を込めてあんたに何かプレゼントでも、と思ったんだが…学生の身分じゃ買えるものも限られてるだろう?」
「ガキが生意気抜かすぜ…オレは欲しいモンなんて別に…」

煙草を咥え、安いライターのフリントに手を掛けようとすると、ターレスがソファに身を乗り出す。

「イブの夜って空いてる?」
「ああ、7時過ぎるくらいには帰るな。」
「…いいこと思い付いた。」

バーダックは一瞬訝しんだが、自分にとって都合の悪い"いいこと"の顔ではないので、顰めた眉を緩ませた。つまり偶に危険な"いいこと"の場合もあるのだ。
煙を燻らし、猫のようにじゃれついてくるターレスを適当に弄りながら問う。

「てめぇは何か欲しいモンねぇのかよ?」
「あんたがいればそれでいいさ。」
「偶にはガキらしいことのひとつも言えねぇのかてめぇは。」
「成人はしてるから子供じゃないぜ?」

憎らしい笑みを浮かべるターレスが腹立たしいやら艶かしいやらで、つい頬をつねってみたくなった。何すんだよバダァ、と大して拗ねてもいない声が返ってくるのを聞き届けると、煙草を灰皿に押し付けて寝室に向かった。


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