短編

□手の話
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今日は貴重な休日である。

海軍本部の大将であるサカズキは、自宅で(一応)恋人である##NAMAE1##と寛いでいた。

この役職に就くと、流石と言うか、かなり家は広く、大きい。

普段、趣味である盆栽を楽しむ和室で。二人はピタリとくっついていた。

読書をするサカズキの背に凭れ、名前も読書をする。


特に言葉は交わさず、頁を捲る音だけがする。

それから暫くして。お互いに同じ姿勢を取り続けるのは疲れたのか、


「動くぞ」


「ん、はーい」


と体勢を変える。



ゴロリ、とサカズキは横になった。名前もそうする。

本に栞を挟み、目頭を揉む。休憩だ。


「……」


普段、海軍に努めている彼から、こんなこと想像できただろうか。
休日の彼を知っているのは自分だけなのでは、

「ふふ」

と思ってニヤけた。



「なんじゃ、気色悪い」



「えぇ、酷い。思い出し笑いみたいなものなのに」


よいしょ、と彼の体を跨ぐように自分の体をだらりと預ける。
だが、鍛え上げられた肉体のサカズキは名前にとっては硬すぎたようだ。


「うぅむ、硬い」


自分の腹部にある名前の頭を優しい手つきでサカズキは撫でてやる。

「おどれはいつも、そうじゃの」


「だって硬いですもん」


「ほいじゃァ、止めりゃえぇじゃろ」

「んー………でもこの体勢、結構好きなので……」


「変わっちょる」


呆れたように言われるも、名前はえへへ、と満足そうに笑った。


「あのですね」


「何じゃ」


「私、好きなんですよ」


「何が」


「サカズキさんのお手々」


こんな厳つい顔に「お手々」何て言うのも、と名前は内心苦笑する。

頭を撫でていた彼の手に頬を擦り寄せる。


「心地がいいってこのことですね…」


大きくて、皮が厚くて、固くて、少し、カサついている。

海兵であるときの彼の、黒い手袋をした手も好きだが、やはり感触はこちらが断然好きだ。


「ふふ、サカズキさん、おっきい」


彼の手と、自分のと。掌同士を合わせて、大きさ比べをする。


「…そりゃあそうじゃろうが」

「そうですけど。…好きなんですよねぇ」


名前がサカズキを見る。


「……主語を付けんか、バカタレ」


「あはは、すみません。でも好きなんですよねー」



特に、手とか、声とか、顔とか…と続ける彼女が、

「全部か。あ、全部好きです」

と言って笑った。


指と指の間に、自分の指を入れて、絡ませてみたり。

この年齢に達すると、手の甲に血管や、骨の筋が浮き出る。…それをなぞってみたり。


「…やっぱり好きですねぇ」


「…ほうか」



大好きな彼の、【手の話】。













「…えっちな手」

「!?」
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