短編

□あの頃は
1ページ/1ページ

〈yuri side〉

「今日の収録一緒やんな?」

うるさい目覚ましを止めて、スマホを見るとそんなLINEが来ていた。彩さん、かわいいな。なんて思える時間が幸せすぎて今すぐに会いたくなった。

「うん!今から家出るよ〜」
とだけ返して、すぐに家を出た。

楽屋に入ると、彩さんはまだ来てないみたいで期待してた自分に勝手に拗ねてる気分になった。
まだ収録まで時間あるし、あかりんに起こすように頼んで寝ることにした。
 
「ん、、だれ、?」
寝ぼけた目をこすりながら後ろから抱きついてきた誰かに声をかける。

「ゆーり、なんで寝てんの?
そんなんやったらさみしいやん、なんで待っててくれへんかったん?」
あ、これはやばい彩さんだ。ちょっと意地悪しようとしてただけなのに。

「なあ、こっち向いてぇ、早く会いたかってん。」

「、、、チュ、、」
あー、やられた、何も言えずにいることをいいことに彩さんは頬にキスしてきた。
メンバーも気づいてちょっとざわついてる。

もう仕方ないと思って、彩さんを向かい合うように膝に乗せ、無言で抱き寄せた。

「彩さんが来るのが遅いのが悪いんですよ?」

「せやけど、待っててもゆーり全然起きてくれへんし、さみしなってん。」

そんなことを耳元でいう彩さんが愛おしくて、拗ねてた自分があほらしくて、抱きしめる力を強くした。

あの頃は、まさか彩さんがこんなに好きになってくれると思ってなくて、行動に移せなかった自分が思い出すたび嫌になる。




〈sayaka side〉

今日は珍しく寝落ちせんくて、寝る準備を完璧にして布団に入る。明日はゆーりに会えるかなって思ってLINEしてみたけど一向に返事は来ないから私も寝ることにした。

太陽の光に起こされて、時計を見れば時間ギリギリ。やっば、寝過ぎた。しかも、ゆーりもう家出てるやん。

急いで家を出て楽屋に入る。

「あかり〜ゆーりどこ?」

「さやねえおはよう!ゆーりならあそこ。」
と指さされた方を見ると寝てるゆーりを発見。疲れてるだろうし、起きるのを待とう。

もう私が来てから15分くらいたつのにゆーりは起きへんし、ゆーりに会えるのをこんなに楽しみにしてたのに、勝手に焦らされているような気分になって、もう我慢の限界やった。

そっと、ゆーりに後ろから抱きついた。包み込むように、優しく、優しく。愛おしい想いを込めて。

「ん、、だれ、?」
まだ寝ぼけているゆーりは私ということにも気づいていないようで、いくら寝起きだからといってもゆーりが私に気づいていないことが嫌だった。


「ゆーり、なんで寝てんの?
そんなんやったらさみしいやん、なんで待っててくれへんかったん?」
思わず想いがあふれてしまった。

「なあ、こっち向いてぇ、早く会いたかってん。」

「、、、チュ、、」
あふれる想いは止まることを知らず、何も言わないゆーりに半ば無理矢理キスをした。
すると、ゆーりはやっと私の方を向いてくれた。
私がキスしてしまったからメンバーが騒いでってのもあると思うけど、そんなんどうだっていい。

ゆーりが振り向いてくれればそれでいい。

「彩さんが来るのが遅いのが悪いんですよ?」
「せやけど、待っててもゆーり全然起きてくれへんし、さみしなってん。」
ゆーりが言ってることは正論。

だけどそれに大人な対応をできないほどもう私はゆーりにはまっている。

ゆーりの抱きしめる力が強くなり、愛されていることを実感する。幸せ、という言葉がこんなにもふさわしいことがないくらい、幸せ、と思った。

あの時、ゆーりに想いを伝えて良かった。
心からそう思えた。


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ