短編
□この人なら 3
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---sayaka side---
今日から新しい店舗での仕事になる。
大卒で働き始めて3年目。
2年間は事務の仕事をして、現場経験のために3年目からは店舗を半年ごとに回ることになっている。
前回の店舗も楽しかったし、私事務よりこっちの方が向いてんのかななんて思えるくらいこの仕事を好きだと思えていた。
初めてだから店長さんに挨拶とか説明とか受けなきゃいけないからお昼過ぎにはお店に入った。
店長さんもいい人そうやし、チェーンということもあって前の店舗と仕事の違いもほとんどない。
なんやかんやで楽しめそうやな〜なんて、呑気なことを考えていた。
ガチャッ
ドアが開いて、背の高いショートカットの女の子が入ってきた。たぶん大学3年とかかな。
簡単に挨拶をして、自己紹介をする。
ピアスのせいか初対面で怖がられることが多いから、とにかく明るく声を掛けた。
自分で言うのもあれやけど、まあそれなりにモテるし、男女どっちから見ても可愛いと思うねん。
やから多くの人はこうやってニコニコ挨拶したらかわいいですねとか言ってくれるのにこの子、なんの反応もない。
こういう反応されるのが新鮮でなんかワクワクしてきちゃった。
そういう子ほど振り向かせたい、的な?
この仕事は好きだから積極的に接客する。
その様子にゆーりちゃんは驚いてるみたいやったっけどなんでなんかな。
てゆうか私、ゆーりちゃんのこと好きやな。
めっちゃ気になるもん。
もっと話しかけたいのに結構混んでるから話す時間がない。
お店が終わっても店長に報告あるし、一緒には帰れないか〜
『お疲れ様でした。』
店長と2人で話してる間にゆーりちゃんは帰ってった。
あーもう、気になりすぎるから早く報告終わらせて店を出て、ゆーりちゃんを追う。
店を出た瞬間、ゆーりちゃんらしき背中が見えた。
「歩くの遅。」
思わず声に出てしまった。
名前を叫び、隣を歩き、話しかける。
冷めてるように見えるけどちゃんと言葉は返してくれるし、なにより初めて笑ってくれた。
それだけで私の心は幸せにあふれてて、もっとこの子を知りたいと思ってしまっていた。