短編
□この人なら 4
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山本さんと出会った日から1週間たった。
私はこの週がテストだったためバイトは休ませてもらっていた。
そして今日、山本さんに会える。
『お疲れ様でーす』
バイト仕様に着替えて、山本さんがすでにいるであろうホールに入る。
「あー、ゆーりちゃん!学校お疲れ様!」
あのニコニコ笑顔で言い寄られたら自然と笑顔になっちゃうわけで。
『ありがとうございます。山本さんもお疲れ様です。』
「なぁー、山本さんやなくて彩さんか彩ちゃん呼びにしてくれん?」
『え、でも、、、』
「いいからいいから、よろしくね?」
「あと帰り、終わったら待っててね。」
そう言い残して山本さん、いや、彩さんは厨房に入ってしまった。
一週間ぶりに会って、私はなぜかドキドキしているというのに彩さんはノリノリで、明るくて、私とは違う人間なんだと思った。
でも、全然嫌じゃなかった。
急に名前で読んでほしいとか、ましてや帰り待っててなんて、勝手すぎるけど、彩さんなら良いかなって思えてしまう自分がいる。
今日は比較的空いてたからぼーっとする時間が多かった。
普段空いてるとき何考えてるんだっけ?って自分で思うくらい今日は後ろの壁の向こうで働いてるであろう人のことを意識してしまう。
さすがに私もこの気持ちに気づかないほど、鈍感ではない。
ただ、もしも彩さんが他のバイトの子にも同じようなことをしていたり、何の気もなかった、なんてことが怖い。
とりあえずもう少し様子を見よう。