短編
□どっち?
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土曜日。
あの頃はおなじみだった喫茶店に入ると、変わらないニコニコ笑顔で美優紀はいた。
「彩ちゃーん!こっちー!」
人の気もしれずに、本当に罪なやつ。
でも美優紀の笑顔に私は何度救われたのだろう?
「急に会おうって珍しいな」
「そやねん、活動再開したらステージが懐かしくて、彩ちゃんに会いたいって思ってん!」
「相変わらずの気まぐれやな」
そんな会話をしながら談笑する。
友達にはなれなかったけど、運命の人。
きっと今でもそのままだ。
「なぁー彩ちゃん、ゆーりとうまくいってんの〜?」
「え、、!?」
まさか美優紀の口からゆーりの言葉が出てくるとは思わなかった。
「まあメンバーやし、仲良くしてんで」
「なーんだ!てっきり彩ちゃんはゆーりが好きなんやと思ってた。」
私はそれを否定することができなかった。
「あたしな、3月に結婚すんねん。彩ちゃんにも会ってほしいなって思って〜」
言葉より先に心臓の鼓動が美優紀に聞こえてしまうくらい動揺する。
「お、おめでとう!」
なんとか振り絞ったすごくありがちな言葉、でもこれが精一杯で、それからのことは覚えていない。
「もしもし?ゆーりちゃん?」
「みるきー、さん?」
「急にごめんな〜」
「私、結婚することなって、彩ちゃんのこと頼むわ〜」
「え、みるきーさん、それはずるいですよ?」
「もう決まったことやから。とりあえず彩ちゃん今日死んでると思うからよろしくね。」