第2幕

□虎の道標
4ページ/5ページ




*



――君の演技も歌も、天性のものだ。


圧のある声で、言われたことがある。


――だからこそ、手放すつもりはない。


刃を突きつけても尚、彼は鋭さの衰えない眼差しでこちらを見据えて口角を上げていた。


――君の異能力、声、そして君自身。どれを取っても捨て難い。だから仮に君が自由を得たとしても、俺は君の前にまた現れるだろう。


それでも行くか、クリス。
脅威が迫る恐怖は脅威の中に留まるよりも過酷だぞ。


ああ、行くよ。
クリスはそう答えた。


それが願いだったから。
それが救いだったから。




それが、あの人の夢だったから。





*

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ