第2幕
□虎の道標
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――君の演技も歌も、天性のものだ。
圧のある声で、言われたことがある。
――だからこそ、手放すつもりはない。
刃を突きつけても尚、彼は鋭さの衰えない眼差しでこちらを見据えて口角を上げていた。
――君の異能力、声、そして君自身。どれを取っても捨て難い。だから仮に君が自由を得たとしても、俺は君の前にまた現れるだろう。
それでも行くか、クリス。
脅威が迫る恐怖は脅威の中に留まるよりも過酷だぞ。
ああ、行くよ。
クリスはそう答えた。
それが願いだったから。
それが救いだったから。
それが、あの人の夢だったから。
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