第2幕
□予定という名の台本
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国木田はショッピングモールに来ていた。
今日は非番だ。
というのも、太宰にからかわれたせいで駄目になった万年筆が増え、新調する必要が出たからだ。
太宰のせい、というか太宰に苛立った自分がへし折ってしまったせいなのだが、根本的な話をすれば太宰のせいなのでその点は問題ない。
今日は平日だ。
いつもより客の少ないショッピングモールの二階に、文具屋はある。
もっと格式高い店で買うのも良いのだが、太宰のせいで万年筆を駄目にする頻度が上がっている以上、あまり選り好みはできないのが懐事情だ。
がしかし、国木田は己の手帳にも記していない出来事に遭遇する。
「……金が足りんな」
そもそも今日万年筆を新調する予定などなかった。
全てが予定外だ。
苛々するのは決してカルシウム不足ではない。
最近さすがに気になって毎朝牛乳を飲んでいるので、その点は問題ない。
「銀行……よりもコンビニの方が手数料が近いな」
銀行はこのショッピングモールの最上階にある。
だったら地上にあるコンビニのATMを利用するのが合理的だろう。
国木田の判断により、彼は一旦ショッピングモールを出てコンビニへ向かった。
コンビニの自動ドアの手前に辿り着けば、ウィンとドアが素早く開く。
来訪者の足を止めない程度の素早さで開く自動ドアは実に良い。
歩数合わせでもたつく時間を予定に考慮しなくて済むのだから。
感心しつつ店内に入った国木田は、しかし足を止めた。
目の前には銃を店員に向ける男達、そして入り口の近くで膝をつき両手を頭の後ろで組んだ見慣れた少女の姿。
「……なぜこうなった」
国木田を閉じ込めるように、自動ドアが背後で閉まる。
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