閑話集
□My dear Valentine
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そそくさと帰っていったクリスを見送り、国木田はマグカップを机の端に置く。
そして大きなため息をついて顔を手のひらで覆った。
「……谷崎め……」
日本のバレンタインデーを知らなかったクリス。
今日それを知り、谷崎にようやく教えてもらったのがこのホットチョコレート。
探偵社員にそれをお披露目するのは明日。
つまり。
――彼女の初めてのバレンタインデーの相手が、国木田だったことになる。
「……仕事、しよう」
言い聞かせ机に向き直る。
あたたかな甘さが体内に灯り、心なしか頭の疲れを癒してくれた気がした。
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「My dear Valentine」end.