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□アベルとアテネ
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「アーテネ!」
「きゃっ」「うわっ」
不意に名前を呼ばれた少女、アテネは飛び跳ねた。
その驚き様に名を呼んだ張本人、アベルも思わず飛び跳ねた。
暫し互いは顔を見つめ合った。
「何でそんなに驚く必要があるんだよ…」
沈黙を破ったのはアベルである。
「あんたが突然話しかけたからでしょ…」
アテネは眉を潜めて言う。
「そうだけどさ…というか一体何してたの?」
「…ゲームしてたら突然PCがよくわかんないことになっちゃったのよ」
アベルは促されてPCを覗き込んだ。
「ああ、エラったんだね。ファイルが正常に動かなかったんだ」
そう言いPCを弄る。
「にしても重いな…何でこんなに…」
困惑した表情を浮かべつつ、ゴミ箱ファイルを開けたアベル。
「うわっ!?」「…!…うえっ」
大量に並ぶ夥しい数の不要ファイルが並んでいた。
「処理しなよ!」
思わずアテネが突っ込む。
「アッハイ…」
アベルはファイルを完全消去した。

「…何が原因でどうなってるか私には全然わかんなかった……」
アベルが退けた後、独りごちた。
いつもそうなのだ。
アベルは、凄い。
ゲームを始め、料理や掃除などの家事とか、その他諸々。
私よりアベルの方が何倍も上手いのだ。
劣等感。劣等感。この感情は。
きっと嫉妬。いや、絶対そうなのだろう。
「…廉価だな。私って」
またも独りごちたのだった。


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