TFprime男主夢

□プロローグ-出会い-
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がしょん、と子供らしい足音が聞こえる。
振り向くとそこにはとてもとても、愛らしい機体が壁からこちらを覗いていた。

不安げに揺れるオプティックや、少し汚れた装甲。近くに保護者がいない様子から、きっと孤児なのだろうと判断しおいでと声をかけてみる。

おずおず、じりじりと近づいてきた愛し子は差し出した手を不思議そうに見つめた後、掌に飛び乗った。
そんな可愛い姿に思わず微笑んで、僕は家路についたのであった。


「君の名前は何かな?」
聞くと恥ずかしそうに手をもじもじとして、小さな声でぽつり。
「…おらいおんぱっくす」
「オライオンパックス…オライオン、って呼んでいいかい?」
「うん、いいよ」

愛し子は声も仕草も愛らしかった。暖かいエネルゴンを手渡すと少しずつ飲んでいる。警戒心を示して欲しかったところだが、まだ僕の加護下なのだからまぁいいか、と呟いた。

「んむ、おいしかった」
ありがとう、と両手で持ったコップを手渡してくれたのでよしよしと撫でると両目を閉じて大人しく撫でられる。かわいいなぁ、

抱き上げて寝室に向かう。扉をあけて、ベッドに寝かせる。きょとんと見上げるので、今から寝るんだよと伝えるとくしゃりと表情をゆがめた。おや、どうしたんだい。

「あの、ね、さみしい、わたしだけでねるの」
「一機だけじゃ不安かい」
「ん、ごめんなさい、…だめでないのなら、いっしょに…」
「あぁ、いいよ。愛しい君が望むなら」

横に寝転んでポンポンと背を叩いてやると愛し子は僕の胸元にぎゅうとしがみつき、次第にスリープモードに入った。
すやすやと眠る愛し子を起こさぬよう、ゆっくりと地面に足をおろす。部屋のドアを閉めて、いつもの作業部屋に行く。
今日の日記を書いて、愛し子についてメモをして、部屋の掃除をして、洗浄して、明日の朝食の下準備をして。

気付けば時間がたくさん過ぎていたが、急ぎ足で寝室に向かった。愛し子が起きていたら大変だ、一緒に寝てあげよう。

静かにドアを開けて中を覗くと、ちゃんと寝ていたことに安堵する。ゆっくりと近付き、もう一度隣に寝転がる。指を愛し子の小さな手に当てると、きゅうと握られて笑いが溢れる。

新しく同居することになったこの愛し子は、一体いくつで僕の元を離れていくのだろう?

なんて、暗いことはすぐブレインから消して、オプティックを閉じたのであった。


ぺちぺち、ぺちぺち

頬に触れる手に気付きオプティックを開く。ブレインが稼働する。窓を見ると既に朝が来ていた。
視線を移すと、愛し子がにへ、と気の抜ける笑みを浮かべて僕の頬に手を添えている。
おはよう、と言うとおはよう、と返してくれた。

愛し子を抱きながら朝食の支度をする。
稀に撫でてやると嬉しそうに笑うものだから、とても愛らしい。

二機で並んで朝食を食べた。美味しいねと笑いあった。そういえば愛し子は好き嫌いはあるのだろうか、…これから知っていくとしよう。
後片付けも二機でした。愛し子の短い腕では洗い物は大変だったようで、少し手伝ってあげた。拗ねてしまったので、頬にキスをすると、顔を赤くして黙り込んでしまった。可愛いなぁ。


「なまえはなぁに?」
「僕?…僕はトルページ。名乗るのが遅れていたね。」
「トルページ…」
「あだ名でも考えてくれてるのかい」
「うん。……トルペ…ページ…?せんせい……!ページせんせい!」
「おや、先生なのかい?」
「なんでもしってる、わたしのせんせいだよ」
「君だけの先生…とてもいいね、そうしよう。僕は今日からページ先生だ」

ページせんせい、ページせんせいと後ろを付いてくるのが日常となり、僕の隣にはいつも愛し子がいた。

愛し子は僕の言うことを何でも吸収して、次に生かすことができる良い子だった。育てる上では困らないが、頭の切れる子は我儘をあまり言わないので心配なところもあったね。

「ページせんせい」
少しだけ大きくなった愛し子の背に合わせて身を屈ませる。まだまだ舌ったらずなところはあるが、充分立派な言葉使いができるようになったのは記憶に新しい。

どうしたんだいと聞くと、愛し子は僕の頬に両手を添えて少しだけ背伸びをした。
かしょ、と音を立てたのは口元で、真近に見える美しいオプティックはぎゅっと閉じられていたのがどうしても可愛い。

これはキス、というもので、どこかの惑星では愛情表現の一種だそうだ。情報を収集することにハマっていたようだから、きっとその時に知ったのだろう。
数ヶ月前から愛し子はキスをするようになった。愛し子はどこまでも可愛いなぁ。

ちみっこい愛し子を連れて町に行ったり、散歩したりしている内に愛し子の本来の性格が掴めてきた。
それを一言で表すならば「正義」なのだが、そんな一言で済ませられるほど愛し子の良い子さは表せきれない。

にしても、ここまで正義感があるならば何か、それが活かせる職業の方が良いのだろうか。警察か?…いや、僕がお世話になりすぎて気まずいな…愛し子のためなら頑張るが…ぐぬ…


なんて考えるのもやめた。愛し子がこの腕の中にいる内は存分に甘やかそう。愛し子が自ら旅立つまでこの甘味な時間を味わってもいいだろう?


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