よみもの

□恋は盲目
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恋は盲目。
昔、誰かがそう言っていた。
これは、盲目な僕のちょっとしたお話。


初めてえふやんと会ったのは、とある旅動画の面接のとき。初めてとは思えないくらいすごく気が合って、時間を気にすることもないほど話が盛り上がったのを覚えている。
それからは、一緒に旅の計画立てたり、買い出しに行ったりと、他のメンバーよりは長い時間を共にしていたと思う。どんなに時間がかかっても全然苦ではなくて、むしろ楽しくてたまらなくて。
僕にとっての親友的ポジションにあいつはいつの間にか立っていた。

初めての旅も計画通りとはいかなかったけど、すごく面白い旅になったし、メンバーとの距離も近くなったと思う。ずっと、運転し続けるのはさすがに疲れたけど…。
それでも、またやりたいっていう気持ちは強くて、えふやんと次の計画を立てるのもとても楽しみだった。

それから、何回か旅を続けるうちに自分の感情に違和感を覚え始めた。
僕以外のメンバーと話しているえふやんに苛立ちを覚えたのがきっかけだった。はじめは苛立つ意味も理由もわからなかったけど、それが続けばさすがの僕でも気が付く。独占欲を抱き始めているんだって。
だんだんとそれはエスカレートしていった。自分でもおかしいだろって思うのに、自分じゃコントロールできなくなってきている。

今日だって、企画の計画をするために二人で会ってるだけなのに、どこか緊張してる
僕なんかよりずっと忙しいえふやんは、こうやって会って計画を進めるのだって頻繁にはできない。有効に使わなくちゃいけないってわかってるけど、隣にいるっていうことだけで気分は上がっていて、せわしなく心臓が動いているのがわかる。

そっか、僕はえふやんのことが好きなんだ。

自覚するのにそう時間はかからなかった。
だけど、気づいたところで罪悪感と失望感に襲われるだけだった。そうゆうのが、好きだっていうのは知ってるけど本人がそうだとは限らない。ましてや友達だ。この友情を裏切りたくなんてない。これは、僕が隠し続ければいいだけのこと。
えふやんと恋人になれるなんて叶わない幸せは願わないから、どうかこのままいつも通りの幸せが続きますように。


後日、またえふやんと会う機会ができた。
あの日は、あの後企画のことなんて考えることなんてできなくて、心が痛かったけど「体調がすぐれない」とか嘘をついてえふやんには帰ってもらった。何日か過ぎれば少しは頭が冷えてきて、なんとも思ってないなんて言えないけど、きっと『普通』ではいられるはずだ。

えふやんが家に着いたのは夕方を過ぎたころだった。夕飯がてら計画を立てることにして、資料を汚さないよう机に並べた。
「そういえば、ろー。体調は大丈夫なの?」
「あぁ、うん。あの後ゆっくり寝たら治ったよ。」
やっぱり、嘘なんてつくもんじゃない。心が痛い…。
「ふ〜ん。ならいいんだけど。」
少しの沈黙、自分から声をかけるのは憚られたけどこれ以上この空気でいるのは耐えられない。
「とりあえず、決められるところはどんどん決めちゃうか。」
「ん。そうだな。」
話を進めるうちはそのことだけに集中できるから、余分なことを考えずに済んだ。途中えふやんとの何気なく肩が触れた時には、すごく緊張したけど何とか平然としていられたはずだ。
あらかた決め終えてしまった頃にはもう、12時近くまで迫っていた。
「えふやん、終電大丈夫?」
「もうそんな時間か。」
前までだったら、「泊っていきなよ」って言えたけど、今はそんなこと言えない。
えふやんが泊まるってなったら僕はどうなってしまうかわからない。えふやんに嫌われたくなんかない。この気持ちが悟られるわけにはいかないんだ。
「明日は特に用がないからなぁ。ろーがいいんなら泊っていきたかったんだけど。」
まさかの発言。えふやんから言われるなんて思ってもいなかった。
どうしようかと考えあぐねていればえふやんは荷物を持って立ち上がる。
「まぁ、嫌なら別にいいんだけどね。」
「い、嫌じゃない!」
はっ。つい言ってしまった。どうしようこのままじゃ…。
「嫌じゃないなら、なに?」
「あ、えと…。」
もうここまで来たら腹をくくるしかない。隠し通せればいいだけのこと。
「ちゃんと、掃除してなかったから…。えふやんはいいのかなぁって。」
「そんなの俺の部屋の方が汚いから(笑)
じゃ、泊まってっていいってことで良い?」
「あ、うん。」
これが、惚れた弱みってやつですか。







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まだ続きます



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