気付かぬ想い

□第3話
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学校に着いてから私たちは張り出されていたクラス分けの紙を見に行った。
あ「やったぁ!3人とも同じクラスだぁ!」

私は正直なところ新しい人たちと仲良くなるのに時間がかかるので、中学から仲良しなこの3人で同じクラスになれたことにホッとしている。教室に向かう途中、友達と楽しそうに話している夢莉ちゃんを見かけて元気になったようで良かったと思ったのと同時にまたいつか話せるといいなんてことも思った。


入学式が終わり、今日はなんとなく一人でゆっくりと帰りたい気分だったのであかりと恵に先に帰ると行って教室を出てきた。この街にはたくさんの桜の木があり、そこからこの街は桜坂と呼ばれるようになったらしい。この学校の前も桜の木が立ち並んでいる。私は桜の木で溢れているこの街が大好きだ。今日はなんとなく自然に触れたくなり私のお気に入りの場所に向かうことにした。

お気に入りの場所まであともう少しというところで、自分の目の前にみたことのある人かげが見えた。あれ、夢莉ちゃん?なんでこんなところにいるんやろ?ここは学校から少し離れていてしかも駅とは逆方向にあるので学校の人でもここに来る人は見たことがない、地元の知る人ぞしるって言う感じの場所だ。

「夢莉ちゃん?」
「あ、さ、さやかさん。朝はありがとうございました。」
「そんな驚かんでも…笑笑朝よりも元気になったみたいでよかった。そんなことより、どうしてこんなとこにいるん?」
「あ、いや実は迷子になっちゃって、、」

夢莉ちゃんは帰り道のら猫を見つけて後を追いかけていたら知らない場所に来るわ、猫はいなくなるわでこんなところまで来てしまったようだ。確かに、裏路地を好むのら猫の後を追っかけていたのであればこんなところに来てしまってもおかしくない。

「さやかさんも迷子ですか?」
「ううん、夢莉ちゃんついてきて!」

せっかくここにいるのならと私のお気に入りの場所まで連れて行こうと思った。 
「ほら、見て!」
「わぁ〜!こんなにこの街全体を見渡せて桜に囲まれる綺麗な場所があるなんて」
「綺麗やろ、ここ私のお気に入りの場所やねん。」
「また来ても、いいですか?」
この場所のことは誰にも行ったことがなかったが夢莉ちゃんになら教えてもいいと思い二人だけの秘密の場所にすることにした。
「ありがとうございます!」
なんだか彼女はとても嬉しそうで、私のお気に入りの場所を気に入ってもらえてなんだか私まで嬉しくなってきた。

「駅まで一緒に行こか?」
「朝もお世話になったのに申し訳ないです。」
「そんなこと言っても迷子なんやろ?、ほら行こ!」
夢莉ちゃんはとても申し訳なさそうだったが、私は気にすることなくとっさに夢莉ちゃんの手を繋いで歩き出した。

最初の方はとっさのことだったので手を繋いでることなんか意識していなかったが、だんだん手を繋いでいることが恥ずかしくなってきた。そんなことを考えていると、夢莉ちゃんが急に走り始めてどこかへ消えてしまった。突然のことに驚きその場に立ち尽くしていると、すぐに戻ってきた。何事かと思ったが両手には何かを持っている。
「はいこれ、今日のお礼です。朝もさっきもありがとうございました。ほんの気持ちですが、ココアとコーヒーどっちがいいですか?」
いいのにと一度は断ったが今日のお礼なのでと何度も言われ、お言葉に甘えてココアをもらうことにした。その後、さっきまで繋いでいた手が離れて何となく寂しい気持ちもしたが恋人でもないのに手をずっと繋いでいるなんて変だよなと我に返りその後はたわいもない話をしながら駅まで帰った。

話していると最寄の駅が同じということで電車も一緒に乗り、話がちょうど盛り上がっているときに駅に着いた。もう少し話していたかったが駅からは方面が逆ということがわかり今日のところはとりあえずLINEを交換して帰ることにした。

歩いているときのことだった。なぜか寂しい。さっきまであんなに楽しかったのに何でだろう、不思議な気持ちだ。とりあえずさっき交換したLINEに“今日は楽しかったよ、ありがとう”と送った。


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