気付かぬ想い

□第9話
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わたしはこの学校の図書室が大好きだ。今日は部活がない日。運動部だから部活が多くなかなか図書室に来る事はできないが、隙間を見つけてはここに来るようにしている。

本を読み進めて伸びをしようと周りを見ると夢莉ちゃんがいる。
「え、、夢莉ちゃん?」

どうやら授業中ぼーっとしていたのを先生に指摘され放課後の図書室当番を任されたらしい。

「彩さんはどうしてここに?」
「ここ、お気に入りの場所なんだよね。ほらこんなに綺麗に日差しが入るでしょ、しかもなんといってもこの木と匂い!なんだか落ち着くんだ、、。」
「、、いい」
「なんか言った?」

何か言っていた気がしたけれどそれは気のせいだったみたい。新学期が始まってからまだ2週間しか経っていないのにわたしのお気に入りの場所は全て夢莉ちゃんに知られてしまった。今までは誰にも知られたくないと思っていたけれど夢莉ちゃんならいいかなと思った。

「一緒に帰らない?」
「いいんですか?」
「いいも何も同じ方向じゃん笑笑それとも、一緒に帰るのいや?」
「全然、一緒に帰りたいです!」
「夢莉ちゃん、ちょっと忘れ物取りに教室寄るから昇降口で待っててもらえる?」
「わかりました!」

夢莉ちゃんと一緒に帰るの入学式ぶりだなぁ。急いで昇降口に戻らないと、、

「彩先輩、ちょっといいですか?」
「ごめん、ちょっと急いでんねんけど、、」
「ちょっとでいいので、、」
「わかった。いいよ。」

正直なところ夢莉ちゃんが待ってるから早く昇降口に行きたかったがちょっとでいいと言われたらなんだか断れなくて話を聞くことにした。

「彩先輩、わたし彩先輩のことがずっと気になってて、、あの付き合ってもらえませんか?」
「え、、」
「去年の学校公開の時に一目惚れして、この学校に入学したんです、、」
「そうなんだ、でもごめんね。」
「わかりました、、これからも彩先輩は憧れです。」

彼女は1年生でお礼をしっかりとして帰って行った。高校に入って告白されたのは初めてではないが何回告白されても慣れない。べつに女の子同士で付き合うことに偏見は全くないけれど誰かを特別に思ったことがないから毎回断っている。

「夢莉ちゃん、長い間待たせちゃったよね。ごめんね。」
「いや、全然気にしないでください。雨降りそうなんで、早く帰りましょう。」
「そやな、雨降りそう。雨降るのやだもんなぁ。よし、駅までダッシュだ!よーいどん!」
「ちょっと、待ってください〜」

駅に着くちょっと前に雨がパラパラ降ってきたが走ったおかげでなんとかなった。わたしもすごい勢いで走ったから息が上がっているが夢莉ちゃんはそれ以上にものすごく息が上がっている。どうやら運動は得意な方ではないようだ。

「はぁはぁ、夢莉ちゃんて足遅いなんて知らなかった、ごめんな。」
「なんか、ひどくないですか」
「ごめん、そんな意味じゃなかった。」
「ま、事実だからいいですけど」
「また今度走ろっか」
「もしかしていじってます?笑笑」
「そんなことないよー」


駅についても雨が降っているので夢莉ちゃんがコンビニに傘を買いに行ってくれることになった。早く戻ってこないかななんて待っているとチャラそうな大学生の人たちに絡まれた。

「可愛いじゃん、いま1人?」
「もしかして傘なくて困ってる?」
「送っていってあげようか?」

どうしよう。背も高い上に見た目も威圧的で言葉を発することも足を動かすことも出来なくなってしまった。その時、

「何やってるんですか?わたしの大事な人なんでやめてください。」

夢莉ちゃんが走ってコンビニから戻ってきてくれて、夢莉ちゃんが声をかけると大学生の人たちは去っていった。わたしは思わず夢莉ちゃんのブレザーの裾を引っ張っていた。思わず手を離す。

「怖かったですよね、遅くなっちゃってすみません。」
「べ、べつに、、、」
「強がらないでください。」

怖かったけど、正直に言うことはできなかったけど夢莉ちゃんはわたしの手が震えていることに気づいたらしく優しく抱きしめてくれた。しばらくすると、夢莉ちゃんがわたしの体から離れた。

「あ、突然すみません、、。」
「ううん、夢莉ちゃんありがとう。じゃあ、家向こうだから。」
「あの、家まで送ります。いや、送らせてください。」
「大丈夫、、」
「あんなことがあったし、今日は送らせてください。」

もう一回断っても頑に送らせてくださいと言いそうだし、さっきのことがあって正直不安だったから送ってもらうことにした。家まで歩く道では、わたしに気を使ってくれているのか思わず笑ってしまうような話をたくさんしてくれた。


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