短編

□呑まれる
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※サイヤ人らしく鬼畜なターレスさんです。苦手な方はご注意ください


人生で1番最低で最悪な日はいつかと聞かれたら、迷わず今日だと断言出来る。


薄暗く窓も何も無い部屋に閉じ込められて、手脚には械がはめてあり身動きが取れない。
ただでさえ そんな最悪な状況だってのに、追い討ちをかけるかのように 目の前には悟空とそっくりの顔をした人物。


なんて嫌な状況なんだ。
私が何をしたっていうんだ。
どうやって逃げよう……
殺されるのかな……
死にたくないな……


パニックに陥って、頭の中では色々な考えでいっぱいで 思考も心臓の鼓動も落ち着きやしない。
そしてやっと絞り出した言葉が

「……私をどうするの?」

だ。

目の前の悟空にそっくりの人物は、目を細め 妖美な雰囲気を漂わせながら口角を上げた。

「……カカロットに散々な目にあわされたからなぁ…貴様を人質なりなんなりと利用させて貰う。人質を捕まえ 逃げ延びる事ができ 俺は運が良いようだ」


「しかも女だ」私の耳元でそう呟いた彼の顔は、なんて言うか、最高に不気味で嫌悪感を抱いた。
たった一言の台詞でこんなにも恐怖心を煽られるなんて。
この言葉にどういった意味が込められているかなんて、考えたくもない。

「…名前を言え」

「…………」

「おい、何だ。死にたいのか?」

乱暴に髪の毛を捕まれ、無理やり視線を合わせられる。
多分私は凄く引きつった顔をしていたのだろう。
彼はまた更に口角をあげ、宛らいい物を見つけたような。そんな表情をしていた。

「寿命を伸ばしたいなら、素直に口に出した方がいい。それとも、このまま死ぬか?」

最早逃げられる状況も無く、小さい声で自分の名を告げる。

「… 名無し………」

「最初からそうしてりゃいいんだよ」

「あぁ、俺の方も挨拶をしておこう。ご存知かもしれないがな。」


"俺の名はターレスだ"

呪いのように吐き出されたその名前は 脳に焼きつけるには十分で、その名前を聞いただけで恐怖する。

ジロジロと視線を向けるその男は、きっと私の命を奪う事を厭わない。
それをしないのは ただ"利用"できるからだ。

利用されるだけされて あとは簡単に殺されてしまうのだろうな。と、自嘲する。

私は、彼等みたいに強くはない。
ましてや戦闘員でもない自分がこの状況から逃れるなんて、奇跡に近い確率だ。

ぐい、と ターレスに顎を掴まれ 彼との距離が短くなる。
彼の目は私をじっと捉えていて、半ば諦め でも希望を捨ててはいない私の考えを見透かされているようだ。

「……もう少し反抗すりゃ、面白いのにな」

「………どうせ反抗的な態度とったら、殴るか殺すかのどちらかでしょ?…下手な真似はしないよ」

「………ちっ」

舌打ち一つ。
ターレスは「つまらない奴」と吐き捨て、此方から視線を逸らした。

良かった なんとか大丈夫だった。と安心したのも束の間。

「っー!?」

自身の唇に宛てがわれたソレは 紛れもなく彼のもので、無遠慮に口内を荒らされる。

お構い無しに入ってくる彼の舌に、ただ ただ嫌悪感しか抱かなくて 涙が頬を伝った。

逃げようにも 後頭部をガッチリと押さえられ、唯一押し返そうとしていた手も 手枷ごと彼の片手で押さえ付けられている。

あまりにも突然の事で 息が合わなくて、呼吸するのもやっとな私に気付いたらしく、ようやくターレスは口を離した。

「………ただの人質にするにゃぁ、勿体ねぇな」

即座に抱きかかえられ、床から離れた自分の体。
今からどうなるのか なんて、次の彼の一言ですぐに理解してしまった。


「ベッド行くぞ。大人しくしてろよ?」


呑まれる
(お前はどういう風に鳴くんだろうな?)
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