短編

□オレンジを追いかける
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*レジェンズとかのゲームが出てきます。設定がめちゃくちゃです。苦手な方はブラウザバック。


「なー 名無し、絶対ェ オラ使った方が強ぇって!」

私のスマホ画面を必死に指さしている悟空の自己アピールは、未だ終わる気配が無い。
もうかれこれ30分以上は彼のアピールを受けているんではなかろうか。

それもこれも発端は私だ…
いつも修行修行の悟空がまさかここまで食い付いてくるとは思わず、彼の目の前でスマホゲームを本格的にやり出してしまったのが裏目に出てしまった。

まだ他のゲームなら良かったものの、私がやっているゲームはレジェンズと名のつく 有名人である悟空含めた仲間達(悪役もいる)を主体とした格闘ゲームで、リリース時から気まぐれにやっている。

「ごめんね悟空。今のステージだと属性的にターレスとバーダックのパーティにするから悟空は使えないんだ」

「つ、使えねぇって……そりゃねぇだろ〜!ちゅーかゾクセイってなんだ!!」

使えないの意味を履き違えられた気もするが それは置いておいて、懇切丁寧に属性についての説明をしてやれば 今度は「父ちゃんはともかく、ターレスは嫌ぇだし嫌だ!」とご立腹。

「これ ただのゲームだから 気にしないで、ね?」

ゲームと割り切れないらしい悟空を説得するつもりで、やんわりと ゲームという部分を強調して言った気遣いの言葉だったが、それだけでは駄目だったみたいだ。

「で、でもよぉ!父ちゃんとターレスってほぼオラと同じ顔だろ?…なのによ、同じ顔のオラを使ってくれないってのは……ちと妬いちまうぞ…」

今度は眉を下げて些か真剣な表情をしている悟空。
成程、此方にとっては たかがゲームでも、悟空にとっては 然れどゲームなのか。

「……あのね悟空。今使ってるキャラは確かに悟空とは別のキャラだけど、一番お気に入りキャラなのは悟空だよ」

「ほ、ほんとけ?」

「そりゃ勿論!ほら、その証拠に悟空だけ全種類キャラ揃ってる!」

パーティ編成の項目から「悟空」と検索して 悟空と名のつくキャラクターを全表示した画面を見せてやれば、先程とは打って変わって凄く嬉しそうな表情になった悟空。(犬みたい)

実際私が言ったことは 紛れもない事実で、ガチャで悟空が実装される度に石を溶かしまくっていた。
勿論、爆死だってした。

「悟空ってキャラにどんだけ課金した事か……」

「カキン?なんだそりゃ?」

「爆発的に死んだ後で諦めきれずお金を注ぎ込む事だよ」

「爆発で死んだうえに銭まで出すんか!?なんかよく分かんねぇけど おめぇオラの為にそこまでしてくれてたんだな」

予想通り言葉そのままに受けとってしまった悟空に笑って、事態が収拾した事に安堵する。
今の説明で納得したのか オラの為を想ってそこまでしてくれてた。という結論に至ってしまったが、「そこまで想ってもらえんのは嬉しいけどよ、あんま無理しねぇでくれよ?こんだけ悟空ってキャラ持ってくれてるだけでもオラすんげぇ幸せだ!」と少し心配されてしまった。同時にすんごいピュアな台詞付きで。

「分かったよ悟空、あんま無理しないようにするね」

悟空が心配してくれてるし、あんな嬉しい台詞をいただいたんだ!課金は控えよう!
この決意は後日、ゲームのお知らせのバナーに表記があった"孫悟空 追加"の文字を見るまでは続いていた。


オレンジを追いかける
(見てくれ名無し!オラもそのゲーム初めてみたぞ!)(……わー…すんごい神引き……)
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