短編
□ガラスの靴は投げられた
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※ちょっと大人向け表現あるので注意です。無理矢理しちゃうお二人。
「おい起きろって」
乱暴に肩を揺さぶられて、強制的に意識を覚醒させられた。
目が覚めて目の当たりにするこの光景は何度目だろう。
「名無しは女なんだ、もう少し丁寧に扱ってやれ」
「へいへい…そうやって紳士ぶってろ、お前も共犯なの忘れんなよ」
「分かってるさ」
かつては友人という関係であった筈の男二人は、両者共々私をジッと見つめている。
その視線に耐え兼ね、思わず顔を逸らせばソレを許さないとばかりに白の手袋に顎を掴まれ強制的に顔を固定された。
「こっち見ろよ」
忌々しいこの手を振り解ければいいものを、生憎後ろ手に縄で縛られてしまっている為それは実行出来そうもない。
仮に腕の自由があったとしても、彼等の強固な肉体に抵抗するのは無理だと教えられてしまうだろうから、どっちみち逃げ道なんてものは無い。
「あーあ、本当なんでこうなっちまったんだろうな。つまんねぇ」
「つまらないのならお前は辞めればいい」
「此処まできて辞めれるわきゃねぇだろ、ルール忘れたのかよ」
「…それもそうだな」
彼等が決めたらしいルールとやらに私はいつの間にか加わってしまっていたみたいで、その所為でこんな状況になっているというのは間違いない。(勝手もいいところだ)
こんな状況になったばかりの時は勿論 反抗もしたし、"何でこんな事をするのか?"と疑問もぶつけた。
そしたら返ってきた答えは"お互いに名無しの事が好きだから"と、この状況に似つかわしく無い言葉の羅列だった。
「ッ…こんなの、間違ってる……」
「ん?何か言ったか?」
「あぁ、名無し…頼むから理解してくれ。俺はお前が好きなだけなんだ」
「抜け駆けすんなよゴジータ、"俺達は"だろ?」
口角を上げたベジットは、そのまま顔を近づけてきて唇に喰らい付いた。
最初は啄む様なゆっくりとした形から、段々と奥深くまで舌を捻じ込んでくるものだから鳥肌が止まらない。
「ッん、ふ、」
「は、ッー」
生き物の様にウネウネと動くベジットの舌は、否応無しに絡みついてくる。
それと同時に後ろから伸ばされたもう一人の手がピタリと胸部を包み込んだ。
「ゴジータ、ずりぃぞ。やっぱお前ムッツリじゃねぇか」
「口付けは先を譲ってやってるんだ、俺だって名無しを堪能させてもらいたい」
「わぁーったよ…悪ぃな名無し。ゴジータの奴、我慢出来ないみたいでよ。ま、俺よりテクニシャンじゃねぇ事は確かだからあまり気持ち良くはなれねぇかもな」
「黙れベジット」
この二人は一体何を言っているのだろうか…?
私の意思なんて関係ない体で話がどんどん進んでいるのだから、怖いったらない。
此方の事はお構い無しに繰り広げられる二人の会話は不気味なもので、より一層恐怖心を煽った。
「ね…もう、やめ、よ……」
やっと絞り出した声で発した途切れ途切れの訴えの言葉。
それを聞いた二人は一旦顔を見合わせ、再度同時に此方を見つめると二人共同じ様な形で口角を上げていた。
「申し訳ないんだが、名無し…それは出来ない」
「生憎お前を解放する気なんざ俺達はさらさらないんでね」
さらりと髪をひとすくい。
どちらともなく近付いた息遣い。
「ッーん……ゃ…」
「名無し……」
ぬるりと首筋を舌が這い、首元に顔を埋めたゴジータは愛おしそうに私の名を呼ぶ。
「安心しろよ、ちゃんと可愛がってやっからさ」
背後に映るベジットは酷く楽しそうにそう言った。
ガラスの靴は投げられた
(だから俺達を受け入れろ)