短編

□あまい記録
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※パラレル設定。改心したブラックさん。平和。


自称神様とやらは、最近現代科学の産物がお気に入りらしい。
かつては非人道的で(人じゃないけど)残虐な行いをしていて、悟空さん達と戦いを繰り広げていたような そんなお人だったけれど、彼等に敗北し見逃してもらってからというもの、悟空さんの無邪気さかそれ以外か、とにかくブラックさんは丸くなった。

そして何故かブラックさんに気に入られた私は監視役と称して定期的にブラックさんの所に来ているのだけれど(ブルマさん命令だ)、彼は悟空さんと違って修行をするワケでも無く読書をするという、なんとも落ち着いた趣味をお持ちで 会話すらもあまりないこの空間は私にとって暇でしかないのだ。

だから以前何気無しに彼の前で手持ちのスマホをいじった際に、予想外にもブラックさんが興味を示したのでこれ幸いと、暇な空間を打破するべくブルマさんに頼んでブラックさん専用のスマホを貰った。

「………名無し、この あまぞん とやらで買い物が出来ると言っていたが、どうやって買うんだ……?」

「あーブラックさん、今の貴方にはまだ通販は早いです…買いたいものがあったら言ってください、私が代わりに買っときますよ」

不服そうな顔をするブラックさん。
仕方ないんですって!何回も教えてやっと覚えたのが、カメラアプリ使って写真撮る事だけな貴方様に、通販で買い物はまだ早いです!(インターネットブラウザの検索とかだって結局痺れを切らして私がしたしね!)

「ふむ……やはり、今のオレに出来るのはこの小さな箱物に光景を収める事だけか……」

「写真撮るの楽しくないですか?丁度周り大自然ですし、いい景色撮れそうですよね」

「言われなくても既に収めている。しかし実物を見ている方が良い」

「まぁ、そりゃそうでしょうね」

「美しい自然だけではないぞ、このオレの顔も、ちゃんと収めている」

「自撮りはやってると思いましたよ」

だってブラックさんだもん。自分大好きな。
あぁ、でも中身は違えど仮にも他人の体で自撮りして楽しんでるってちょっと気持ち悪いってか不気味だな。
こんな事口が裂けても言えないけれど。

「お前、気味悪がってるだろう」

「え、いえいえそんな滅相もございません!」

「顔に出ているというのが分からんとは……」

「え"っ」

「図星か………まぁ、いい。オレは寛大だからな、気にする事はない」

「あ、ーはい……」

寛大で"お優しい"ブラック様は、私の失言を(実際声には出してないけど)許して下さった!
まぁそんな感謝の気持ちも一瞬で終わった事で、次の瞬間には既に"やっぱり他人の体でキメ顔して自撮りはないわ"と結局引いた。

「そういえばブラックさんが撮ったお写真、見た事ないです」

「ん?なんだ、オレの写真を見たいのか?」

「あ、いえ。ブラックさんの写真以外でお願いします」

「…貴様神に向かって失礼だとは思わんのか……?」

「だってブラックさん実物が目の前にいらっしゃるんですし、写真じゃ物足りなさを感じるかと思いましてね」

「……ふむ、一理あるな。よし、それならこの しゃしんふぉるだ から閲覧するがいい」

またまたしてしまった失言の誤魔化しで、本人が目の前にいるから写真は不要だぜ理論を披露したが思いの外上手くいってしまった。ブラックさんは本当、こういう所はめちゃくちゃチョロい。

手渡されたスマホの画面には、彼が言った通り写真フォルダが表示されている。(写真フォルダの発音からして、やっぱ彼はアナログな人だ)
これ以上失言して彼の気分を害する事が無いように、頭の中でどんどん浮かんでくる立証されつつあるブラックさんポンコツ説は態度に出す事なく飲み込んだ。

悟られまいと、写真フォルダ内をスクロールして彼が撮った自然の景色を目に取り入れて、直様意識をそちらに逸らす。

あぁ、やっぱ綺麗だな。と、写り映えがとても良い写真の数々を目にしてなんだかんだ言ってカメラ自体は使いこなしているブラックさんに感心した。

「……」

「どうした、名無し」

「あの……コレ……」

「あぁ、いつぞやの……なに。偶然良いタイミングで撮れる時があってな。神として愛らしい生物の生態を記録に残したまでよ」

感心した所で終わりゃ良かったのにね。
見つけてしまったんだよね。

生まれた時からずっと見てきた、見飽きた顔がアホ面かまして寝てる一枚を。

「どうだ?綺麗に撮れてるだろう?……お前の寝顔は貴重だからな、重宝してる」

「な、なんで撮ったんですかこんなの……趣味悪いですよ」

「なんとでも言え。それに先程も言っただろう?"愛らしい"生物を記録に残したと。愛しいと想った者を記憶して何が悪いというのだ」

あぁ、この人反則だ。
やんわりと微笑んで私の頭を撫でたブラックさん。
「次は起きている名無しでも撮ってやろうか」
と言ったもんだから、すぐに顔に熱が広がっていくのを感じた。



後日、なんかしてやられたのが少し悔しかったのでお返しとばかりにブラックさんの寝顔を自前のスマホで盗撮してやった。



あまい記録
(ニヤニヤしながら すまほ なんぞ覗いてどうしー……!?)(お返しですブラックさん)
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