短編

□Let me go.
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※パラレル設定。改心してるブラックさん。


「おめぇ、いい加減しつけーぞ!名無しに付き纏うなよ!」

「付き纏っているのは貴様の方だ孫悟空。少しは名無しの迷惑を考えたらどうなんだ?」

何処の世界に、蟹頭とか言われてるおかしなヘアスタイルの筋肉質な男二人に(顔もそっくり!怖っ!)挟まれて喜ぶ人がいるんだろう?
私はどうやら違うみたいだ。全っっっ然嬉しさを感じない。微塵も。

いや、シチュエーション的には少女漫画でよくある イケメンに取り合いされてキャッな展開なんだろうけど、現実的に考えてみてよ?

「……あのさ、買い物行かせてよ…」

買い物に向かってる道中で彼等に会って(最初にブラック、その後悟空)普通に話すならまだしも、物理的に足止めを喰らっている。物理的に。腕を、引っ張られている。二人に。普通に、痛い。

取り合いされるのも迷惑極まりないし、そもそも大の大人二人がこんな阿呆らしい事で言い争いを繰り広げている現場を間近で見なきゃいけない事が非常に苦痛である。
精神的にも肉体的にも。

「だからよー、オラが名無しと買い物行って荷物持ち手伝うからブラックは下がってていいって!オラの方が名無しと付き合い長ぇんだしさ!」

「今それは関係ないだろう。そもそもオレが最初に荷物持ちを申し出たんだ。後からのこのこやってきたお前に役割を譲る気は毛頭ない」

「いや、あの……私別に荷物持ちは必要としてない……買う物エコバッグに入る量だし…」

「んじゃあ買い物終わったら飯行こうぜ!最近おめぇと出掛けてねぇしさ」

「どうせ奢ってもらいたいが故に提案しているんだろう?…名無し、孫悟空と出掛けても損しか無いぞ。俺が財布の中身を貴様の為に使ってやろう、人間らしく。」

「そーんな事言っちゃってよ〜、おめぇ銭あんのか?知ってっか?銭無ぇと何も買えねぇぞ?」

「そんな常識的な事を知らぬわけがなかろう、お前じゃないんだ。硬貨や紙幣はザマスから貰っている」


ドラマでよくある やめて!私の為に争わないで!みたいな台詞を言える状況だったらどんなにマシだっただろう。
ロマンの欠片も無く何処かネジが外れてる会話を繰り広げ、いい加減間に挟まれている私は限界が近い。

ナチュラルに奢って貰おうとしてる悟空とか、まさかのお小遣い制だったブラックとか、最早そんなのどうでもいい。
早く行かせてくれ、買い物に。

「…………先に進ませてください」

なんかもうあまりにも挟まれすぎて、苛立ちからか自然と出た声なんだと思う。
自分でも驚くくらいの静かで低いトーンで、事務的に言うように出た言葉は二人にダメージはあったようで 先程まで煩いくらいに言い争っていた口は閉じられていた。

「………じゃあね」

固まる二人を横目に、目的地へと足を進める。
これからはネット通販の買い物も検討しようと考えを頭に浮かばせながら。





「……お、おめぇの所為で名無し怒っちまったじゃねぇか…」

「何を言う、お前の諦めの悪さの所為だろう」

「……どっちみちオラ達の所為で名無し怒っちまったんだぞ、オラあいつに嫌われたくねぇ…なんかプレゼントでもして謝っか?」

「………それは同感だ」




Let me go.
(うめぇ食いもんでも渡そっかな)(お前の考えに関心する日が来ようとは……)
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